公益法人の設立・会計・税務・公益認定、学校法人・社会福祉法人・宗教法人の会計

「公益法人会計基準」の運用指針


目次


1.設定について

2.公益法人会計基準における公益法人について

3.キャッシュ・フロー計算書の作成について

   (1) 作成しないことができる法人

   (2) キャッシュ・フロー計算書の表示方法

4.財産目録の作成について

5.退職給付会計における退職給付債務の期末要支給額による算定について

6.関連当事者との取引の内容について

   (1) 関連当事者の範囲

   (2) 重要性の基準

7.指定正味財産として計上される額について

8.子会社株式・関連会社株式について

9.基金について

10.補助金等の取扱いについて

11.資産の時価が著しく下落した場合について

   (1) 時価が著しく下落したとき

   (2) 使用価値

12.財務諸表の科目

   (1) 貸借対照表に係る科目及び取扱要領

   (2) 正味財産増減計算書に係る科目及び取扱要領

   (3) キャッシュ・フロー計算書に係る科目及び取扱要領

13.様式について

   (1) 貸借対照表

   (2) 正味財産増減計算書

   (3) キャッシュ・フロー計算書

   (4) 財務諸表に対する注記

   (5) 附属明細書

   (6) 財産目録

附則

公益法人会計基準を適用する際の経過措置

1.適用初年度における前事業年度の財務諸表の記載について

2.公益法人会計基準の適用と認定・認可の関係について

   (1) 特例民法法人が公益法人又は一般社団・財団法人へ移行申請する場合

   (2) 一般社団・財団法人を設立して公益認定を申請する場合

3.退職給付会計の導入に伴う会計基準変更時差異の取扱について

4.過年度分の減価償却費の取扱いについて

5.適用初年度における有価証券の取扱いについて

   (1) 一般正味財産を充当した資産として所有している有価証券

   (2) 指定正味財産を充当した資産として所有している有価証券

6.移行時における過年度分の収益又は費用の取扱いについて

7.特定資産、指定正味財産及び一般正味財産の適用初年度の期首残高について

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公益法人会計基準の運用指針


平成20年4月11日
内閣府公益認定等委員会

1.設定について


   公益法人会計基準の運用指針(以下、「運用指針」という。)は、公益法人制度改革関連三法の成立に伴い、 公益法人等の指導監督等に関する関係省庁連絡会議申合せとして平成16年に改正された公益法人会計基準(以下、「平成16年改正基準」という。)の 見直しを行った結果、平成16年改正基準のうち表示に関する項目、別表及び様式については、平成16年改正基準から切り離し、公益法人制度改革関連三法、 関係する施行令及び施行規則に従うべく内容を改め、ここに運用指針として定めたものである。加えて、公益法人等の指導監督等に関する 関係省庁連絡会議幹事会申合せとして平成17年に公表された平成16年改正基準の運用指針のうち、 公益法人会計基準の適用にあたって引き続き必要となる事項につき、本運用指針において定めるものとした。

   本運用指針を定めた目的は、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(以下、「認定法」という。)第2条第3号に定めのある公益法人、 及び「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」 (以下「整備法」という。)第123条第1項に定めのある移行法人が、公益法人制度のもとで、法人運営の適切な状況を広く法人の関係者に伝えるため、 別途定めのある公益法人会計基準と合わせて法人の情報開示を行うための方法を定めることにある。

   なお、本運用指針の適用の前提としては、公益法人制度改革関連三法、関係する施行令及び施行規則並びに公益法人会計基準がある。 法人が会計に関する書類を作成する際に、公益法人会計基準に定めのない事項については、本運用指針によるものとする。


2.公益法人会計基準における公益法人について


   公益法人会計基準における公益法人は、以下に定めた法人とする。

[1] 認定法第2条第3号に定めのある公益法人(以下「公益社団・財団法人」という。
[2] 整備法第123条第1項に定めのある移行法人(以下「移行法人」という。)
[3] 整備法第60条に定めのある特例民法法人(以下「申請法人」という。)(整備法第44条、第45条の申請をする際の計算書類を作成する場合。)
[4] 認定法第7条の申請をする一般社団法人又は一般財団法人(以下「一般> 社団・財団法人」という。)

3.キャッシュ・フロー計算書の作成について


 公益法人会計基準に定めのあるキャッシュ・フロー計算書の作成に当たっては、以下によるものとする。

(1) 作成しないことができる法人
   公益法人会計基準に定めのあるキャッシュ・フロー計算書については、認定法第5条第12号の規定により会計監査人を設置する公益社団・財団法人以外の公益法人は、これを作成しないことができる。
(2) キャッシュ・フロー計算書の表示方法
   事業活動によるキャッシュ・フローの区分においては、直接法又は間接法のいずれかを用いてキャッシュ・フローの状況を記載しなければならない。

4.財産目録の作成について


 公益法人会計基準に定めのある財産目録については、移行法人及び一般社団・財団法人は、これを作成しないことができる。


5.退職給付会計における退職給付債務の期末要支給額による算定について


 退職給付会計の適用に当たり、退職給付の対象となる職員数が300人未満の公益法人のほか、職員数が300人以上であっても、 年齢や勤務期間に偏りがあるなどにより数理計算結果に一定の高い水準の信頼性が得られない公益法人や原則的な方法により算定した場合の額と期末要支給額 との差異に重要性が乏しいと考えられる公益法人においては、退職一時金に係る債務について期末要支給額により算定することができるものとする。


6.関連当事者との取引の内容について


 公益法人会計基準注解の注17における関連当事者との取引の内容について財務諸表に注記を付す場合の関連当事者の範囲及び重要性の基準は、以下のとおりである。

                                            
(1) 関連当事者の範囲
[1] 当該公益法人を支配する法人
   当該公益法人を支配する法人(以下「支配法人」という。)とは、当該公益法人の財務及び事業の方針を決定する機関を支配している法人をいい、次の場合には当該法人は、支配法人に該当するものとする。
当該法人の役員若しくは職員である者、又はこれらであった者で自己が当該公益法人の財務及び事業の方針の決定に関して影響を与えることができる者が、当該公益法人の理事会その他これに準ずる機関の構成員の過半数を占めていること
当該公益法人の重要な財務及び事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること
当該公益法人の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているものに限る。)の総額の過半についての融資を行っていること
   ただし、財務上又は事実上の関係から当該公益法人の意思決定機関を支配していないことが明らかな場合には、対象外とすることができるものとする。
   なお、国及び地方公共団体については、公益法人の監督等を実施していることをもって、ただちに支配法人とはしないが、上記ア~ウに該当しない場合であっても、 国又は地方公共団体が当該公益法人の財務又は事業の方針を決定する機関を支配している一定の事実が認められる場合には、当該公益法人は、 国又は地方公共団体を支配法人とみなして公益法人会計基準注解の注17に定める注記をすることが望ましいものとする。
[2] 当該公益法人によって支配される法人
   当該公益法人によって支配される法人(以下「被支配法人」という。)とは、当該公益法人が他の法人の財務及び事業の方針を決定する機関を支配している場合の他の法人をいい、次の場合には当該他の法人は、被支配法人に該当するものとする。
I ) 当該他の法人が出資等により議決権を行使することができる形態の場合
当該公益法人が他の法人の議決権の過半数を自己の計算において所有していること
当該公益法人が他の法人の議決権の100分の40以上、100分の50以下を自己の計算において所有している場合で、以下のいずれかの要件に該当すること
a. 自己の計算において所有している議決権と、自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を 行使すると認められる者及び自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権とを合わせて、他の法人の議決権の過半数を占めていること
b. 当該公益法人の役員若しくは職員である者、又はこれらであった者で自己が他の法人の財務及び事業の方針の決定に関して影響を与えることができる者が、 他の法人の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の過半数を占めていること
c. 他の法人の重要な財務及び事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること
d. 他の法人の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているものに限る。)の総額の過半についての融資を行っていること
e. その他、他の法人の意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在すること
ii) 当該他の法人が出資等により議決権を行使することができない形態の場合
当該公益法人の役員若しくは職員である者、又はこれらであった者で自己が他の法人の財務及び事業の方針の決定に関して影響を与えることができる者が、 他の法人の理事会その他これに準ずる機関の構成員の過半数を占めていること
他の法人の重要な財務及び事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること
他の法人の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているものに限る。)の総額の過半についての融資を行っていること
[3] 当該公益法人と同一の支配法人をもつ法人
   当該公益法人と同一の支配法人をもつ法人とは、支配法人が当該公益法人以外に支配している法人のこととする。
[4] 当該公益法人の役員及びその近親者
   当該公益法人の役員及びその近親者とは、以下に該当するものとする。
役員(準ずる者を含む)及びその近親者(3親等内の親族及びこの者と特別の関係にある者)
役員(準ずる者を含む)及びその近親者が議決権の過半数を有している法人
   なお、相談役、顧問その他これに類する者で、当該公益法人内における地位、職務等からみて役員と同様に実質的に公益法人の経営に従事していると認められる者も、 役員に準ずる者として対象とすることとする。
   ただし、公益法人の役員(準ずる者を含む)のうち、対象とする役員は有給常勤役員に限定するものとする。
(2) 重要性の基準
[1] 支配法人、被支配法人又は同一の支配法人を持つ法人との取引
正味財産増減計算書項目に係る関連当事者との取引
   経常収益又は経常費用の各項目に係る関連当事者との取引については、各項目に属する科目ごとに、経常収益又は経常費用の合計額の100分の10を超える取引を開示する。 経常外収益又は経常外費用の各項目に係る関連当事者との取引については、各項目に属する科目ごとに100万円を超える増減額について、その取引総額を開示し、取引総額と損益が相違する場合には損益を併せて開示する。
   なお、指定正味財産から経常収益や経常外収益に振替られたものについては、関連当事者との取引の開示においては含めないものとする。
   指定正味財産増減の部の各項目に係る関連当事者との取引については、各項目に属する科目ごとに100万円を超える増加額について、その取引総額を開示する。
   ただし、経常外収益又は経常外費用の各項目及び指定正味財産の部に係る関連当事者との取引については、上記基準により開示対象となる場合であっても、各項目に属する科目の取引に係る損益の合計額が、 当期一般正味財産増減額の100分の10以下となる場合には、開示を要しないものとする。
貸借対照表項目等に係る関連当事者との取引
   貸借対照表項目に属する科目の残高及びその注記事項に係る関連当事者との取引、被保証債務並びに関連当事者による当該法人の債務に対する担保提供資産に係る取引については、 その金額が資産の合計額の100分の1を超える取引について開示する。
   ただし、資金貸借取引、有形固定資産や有価証券の購入・売却取引等については、それぞれの残高が100分の1以下であっても、取引の発生総額が資産の合計額の100分の1を超える場合には開示を要するものとする。
[2] 役員及びその近親者との取引
   役員及びその近親者との取引については、正味財産増減計算書項目及び貸借対照表項目のいずれに係る取引についても、100万円を超える取引については全て開示対象とするものとする。

7.指定正味財産として計上される額について


   指定正味財産として計上される額は、例えば、以下のような寄付によって受け入れた資産で、寄付者等の意思により当該資産の使途 、処分又は保有形態について制約が課せられている場合の当該資産の価額をいうものとする。

   
[1] 寄付者等から公益法人の基本財産として保有することを指定された土地
[2] 寄付者等から奨学金給付事業のための積立資産として、当該法人が元本を維持することを指定された金銭

8.子会社株式・関連会社株式について


   子会社株式とは、公益法人が営利企業の議決権の過半数を保有している場合の当該営利企業の株式をいう。 また、関連会社株式とは、公益法人が営利企業の議決権の20%以上50%以下を保有している場合の当該営利企業の株式をいう。


9.基金について


   公益法人会計基準注解の注5、注7及び注12における基金とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」 (以下「一般社団・財団法人法」という。)第131条により設置されたものとする。


10.補助金等の取扱いについて


   公益法人会計基準注解の注13における補助金等とは、補助金、負担金、利子補給金及びその他相当の反対給付を受けない給付金等をいう。 なお、補助金等には役務の対価としての委託費等については含まないものとする。


11.資産の時価が著しく下落した場合について

   
(1) 時価が著しく下落したとき
   資産の時価が著しく下落したときとは、時価が帳簿価額から概ね50%を超えて下落している場合をいうものとする。
(2) 使用価値
   資産の時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額を しなければならないが、有形固定資産及び無形固定資産について使用価値が時価を超える場合には、取得価額から減価償却累計額を控除した価額を超えない限り において、使用価値をもって貸借対照表価額とすることができるものとされている。この時価と比較する使用価値の見積りに当たっては、 資産又は資産グループを単位として行うことができるものとする。

12.財務諸表の科目


13.様式について


附則

公益法人会計基準を適用する際の経過措置

   公益法人会計基準を適用するに当たっては下記のとおり、経過措置を設けるものとする。


1.適用初年度における前事業年度の財務諸表の記載について

   貸借対照表、正味財産増減計算書及びキャッシュ・フロー計算書の前事業年度の数値については、記載しないことができる。


2.公益法人会計基準の適用と認定・認可の関係について

   
(1) 特例民法法人が公益法人又は一般社団・財団法人へ移行申請する場合
   特例民法法人が移行認定・認可の申請をする場合には、 平成20年12月1日以後開始する最初の事業年度に係る財務諸表は、公益法人会計基準前文3の本会計基準の実施時期 にかかわらず、平成16年改正基準を適用して作成することができる。
(2) 一般社団・財団法人を設立して公益認定を申請する場合
   公益法人会計基準及び本運用指針によるものとする。

3.退職給付会計の導入に伴う会計基準変更時差異の取扱について

   退職給付会計の導入に伴う会計基準変更時差異については、平成20年12月1日以後開始する最初の事業年度から12年以内の一定の年数にわたり定額法により費用処理するものとする。なお、 既に退職給付会計の導入が行われている公益法人においては、従前の費用処理方法により引き続き行うものとする。


4.過年度分の減価償却費の取扱いについて

   減価償却を行っていない資産を有する公益法人においては、原則として適用初年度に過年度分の 減価償却費を計上するものとする。この場合、過年度の減価償却費については、 正味財産増減計算書の経常外費用に計上するものとする。
   ただし、過年度分の減価償却費を一括して計上せず、 適用初年度の期首の帳簿価額を取得価額とみなし、当該適用初年度を減価償却の初年度として、以後継続的に減価償却することも認める。 なお、この場合に適用する耐用年数は、新規に取得した場合の耐用年数から経過年数を控除した年数とするものとし、 その旨を重要な会計方針として注記するものとする。


5.適用初年度における有価証券の取扱いについて

   
(1) 一般正味財産を充当した資産として所有している有価証券
[1] 時価評価が適用される有価証券
   適用初年度の期首において指定正味財産を充当した資産として所有している有価証券のうち、時価評価が適用されるものについては、当該適用の前事業年度末の帳簿価額と前事業年度末の時価の差額は、原則として過年度分として当事業年度分と区分して表示するものとする。ただし、重要性が乏しい場合には一括して表示することができるものとする。
[2] 償却原価法が適用される有価証券
   適用初年度の期首において指定正味財産を充当した資産として所有している有価証券のうち、償却原価法が適用されるものについては、次のいずれかの方法によるものとする。
   取得時まで遡って償却原価法を適用する方法
   なお、この方法による場合は、原則として過年度分については当事業年度分と区分して表示するものとする。ただし、重要性が乏しい場合には一括して表示することができるものとする。
   適用初年度の期首の帳簿価額を取得価額とみなして、当該適用初年度の期首から満期日までの期間にわたって償却する方法
   平成20年12月1日以後開始する最初の事業年度の期首において既に適用している場合には引き続き従前の方法
(2) 指定正味財産を充当した資産として所有している有価証券
[1] 時価評価が適用される有価証券
   適用初年度の期首において指定正味財産を充当した資産として所有している有価証券のうち、時価評価が適用されるものについては、当該適用の前事業年度末の帳簿価額と前事業年度末の時価の差額は、原則として過年度分として当事業年度分と区分して表示するものとする。ただし、重要性が乏しい場合には一括して表示することができるものとする。
[2] 償却原価法が適用される有価証券
   適用初年度の期首において指定正味財産を充当した資産として所有している有価証券のうち、償却原価法が適用されるものについては、次のいずれかの方法によるものとする。
   取得時まで遡って償却原価法を適用する方法
   なお、この方法による場合は、原則として過年度分については当事業年度分と区分して表示するものとする。ただし、重要性が乏しい場合には一括して表示することができるものとする。
   適用初年度の期首の帳簿価額を取得価額とみなして、当該適用初年度の期首から満期日までの期間にわたって償却する方法
   平成20年12月1日以後開始する最初の事業年度の期首において既に適用している場合には引き続き従前の方法

6.移行時における過年度分の収益又は費用の取扱いについて

   移行時における過年度分の収益又は費用の取扱いについては、適用初年度において、 原則として、正味財産増減計算書の経常外収益又は経常外費用に計上するものとする。ただし、 重要性が乏しい場合には経常収益又は経常費用とすることができるものとする。なお、経常外収益又は経常外費用に計上 する科目が複数になる場合には、経常外収益又は経常外費用においてそれぞれの科目として計上する方法のほか、 経常外収益又は経常外費用毎にそれぞれ「会計基準適用に伴う過年度修正額」等の科目として計上する方法 によることもできるが、後者による場合はその内訳科目を設け、又は内訳を注記することとする。


7.特定資産、指定正味財産及び一般正味財産の適用初年度の期首残高について

   特定資産、指定正味財産及び一般正味財産の適用初年度の期首残高については、 当該適用の前事業年度末の貸借対照表を組み替えて算定するものとする。このうち、 正味財産について過年度に受け入れたものは、適用時に寄付者等の意思により制約されていることが 明らかなものについて、指定正味財産の期首残高とする。