公益法人の設立・会計・税務・公益認定、学校法人・社会福祉法人・宗教法人の会計

1 一般財団法人設立の基礎知識

◎簡単に設立できるようになった


    従来の公益法人制度においては、許可主義といって、「公益に関する社団又は財団であって、営利を目的としないものは、主務官庁の許可を得て、法人とすることができる」とされていました。これに対し、新しい公益法人制度においては、一般財団法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立します。これを準則主義といいます。
    従来の公益法人制度における公益法人の設立手続では、主務官庁の裁量が大きく、主務官庁の許可(公益性の認定など)に多大な労力を要していましたが、新しい公益法人制度における一般財団法人の設立手続は簡便化され、準則主義が採用されたことで、株式会社の設立とほぼ同様の設立手続となりました。

◎300万円以上の資金が必要


    一般財団法人は、設立しようとする者が、300万円以上の財産を拠出し、登記をするだけで設立することができます。財団法人とは一定の目的のために提供された財産を運営するためにつくられる法人ですので、設立者については、1人でも複数でもかまいません。

◎必須の機関がある


    一般財団法人に設置するべき機関としては、評議員及び評議員会が法定されており、理事、理事会及び監事が必須機関とされています。設立時より、評議会、理事会、監事を設置する必要があります。一般社団法人のように社員総会はありません。

◎事業内容に制限なし


    一般財団法人は公益法人ではありますが、事業の内容について制限がありませんので、基本的には自由に事業を行うことができます。公益目的事業を主たる目的とする必要はなく、事業目的に制限はありません。

◎利益の分配はできないが


    一般財団法人は、非営利法人の類型に属するため、たとえば収益活動などで得た利益を構成員である社員に配当金するなどの利益の分配はできません。ただし、一般財団法人として収益事業を行い利益を得ること、一般財団法人の理事に役員報酬を支払うこと、従業員に対して給与を支払うことなどは、構成員への利益の分配にはあたりませんので、問題なくできます。


2 一般財団法人設立の骨格決定

①一般財団法人の設立者の決定


    財団法人は、一定の目的のために提供された財産を運営するためにつくられる法人です。設立者については、1人でも複数でもかまいません。新しい公益法人制度においては、法人法の規定により、設立者が1人であるときも、2人以上であるときも、一般財団法人の設立ができることが明らかとなっています。

②一般財団法人の名称決定


一般財団法人の名称を決定するにあたっては、次のような制限があります。

イ    「一般財団法人」という文字を必ず入れなければならない。
ロ    一般社団法人と誤解されるおそれのある文字を使用してはならない。

ハ    銀行、病院、診療所、信託、保険などの文字はそれらの法律で使用が制限されるので、使わない方が無難。

③一般財団法人の目的決定


    一般財団法人設立の目的とその行う事業の内容を決定します。一般財団法人は、その行う事業には制限がありませんので、違法な事業や他の法律で制限されている事業以外のものであれば、自由に目的を定めることができます。
    一般財団法人は、公益目的事業を行わなければならないというわけでなく、すべての事業が収益目的事業であってもかまいません。

④主たる事務所の所在決定


    一般財団法人の住所を決定しなければなりません。定款への記載は市区町村までの記載でもかまいません。

⑤一般財団法人の機関決定


    一般財団法人の組織、つまり設置する機関と役員を決定する必要があります。一般財団法人の設立にあたり、絶対に必要な機関は、「評議員」、「評議員会」、「理事」、「理事会」、「監事」です。また、任意に「会計監査人」も設置することができます。

イ    一般財団法人の評議員

    一般財団法人では、評議員は3名以上必要です。上限の定めはありません。評議員評は、理事に対し、一定の事項を評議員会の目的とすることを請求できます。また評議員は、評議員会において、評議員会の目的である事項につき議案を提出することができます。



ロ    一般財団法人の評議員会

    一般財団法人の評議員会は、すべての評議員で構成されます。評議員会は、法人法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができます。



ハ    一般財団法人の理事

    一般財団法人の理事は、法人の業務を執行する者で、必ず3人以上は置かなければなりません。株式会社でいえば取締役に当たるものです。設立時理事は一般財団法人の設立時理事の中から、設立時代表理事を選定しなければなりません。代表理事は一般財団法人を代表します。代表理事は、株式会社でいえば代表取締役にあたります。



ニ    一般財団法人の理事会

    一般財団法人の理事会は、業務執行の決定、理事の職務執行の監督、代表理事の選任などを行います。理事会は株式会社でいえば取締役会に当たるものです。



ホ    一般財団法人の監事

    一般財団法人の監事は、理事の職務の執行を監査します。株式会社で言えば監査役に当たるものです。一般財団法人では、監事を必ず置かなければならないとされています。




3 一般財団法人の設立手順

    一般財団法人の具体的な設立手続きは、次の手順で行います。

①一般財団法人の設立に必要な書類の準備


    一般財団法人の設立者及び設立時代表理事は、設立手続きにおいて実印の押印と印鑑証明の提出が必要になります。設立者は公証人役場で定款の認証を受けるときに印鑑証明を各1通、設立時代表理事は法務局に設立登記の申請をする際に各1通必要になります。
    また、一般財団法人の設立登記にあたっては印鑑登録が必要であり、この印鑑登録のために法人の代表印を用意しなければなりません。登録する印鑑の大きさには制限があります。

②一般財団法人立時理事による定款の作成


    一般財団法人の定款に必ず記載しなければならない事項は次の通りです。

イ    一般財団法人の名称
ロ    一般財団法人の目的
ハ    一般財団法人の主たる事務所の所在地

二    一般財団法人の設立時評議員、理事及び監事の氏名又は名称及び住所

ホ    一般財団法人の代表理事の氏名及び住所
へ    一般財団法人の役員の資格の得喪に関する規定
ト    一般財団法人の公告方法
チ    一般財団法人の事業年度

③公証人による定款の認証


    定款の認証とは、一般財団法人の定款が法律に従って正しく作成されているかを公証人に確認してもらう手続きをいいます。定款の認証を受ける公証役場は、設立する一般財団法人の主たる事務所がある都道府県内にあればどこでもかまいませんが、他の都道府県の公証役場ではダメです。
    定款の認証を受けるためには、定款3部、設立時理事の印鑑証明、手数料5万2000円程度が最低でも必要になります。

④定款で定めなかった場合に設立時理事の選任等


    一般財団法人の設立に必要な事項であって定款で定めていないものがある場合にはこれを決定します。例えば、「主たる事務所の所在場所(町名、地番など)」、「設立時役員(理事、監事)」、「設立時代表理事」

⑤設立時理事による設立手続の法令・定款違反の調査


    一般財団法人の設立時理事(および監事)は、その選任後速やかに、一般財団法人の設立の手続が法令または定款に違反していないかを調査することになっています。調査の結果、もし違法又は不当な事項があった場合には、設立者にその旨を通知しなければなりません。ただし、この調査をしたことを証する書面は、登記申請の添付書類とはなっていませんので、設立登記申請書に添付して法務局へ提出する必要はありません。

⑥一般財団法人の設立の登記


    一般財団法人の設立のための登記は、主たる事務所を管轄する法務局で行うことになります。一般財団法人の設立は、設立時理事等の調査が終わった日または設立者が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に、設立時代表理事が登記申請することになっています。