公益法人の設立・会計・税務・公益認定、学校法人・社会福祉法人・宗教法人の会計

1 一般社団法人設立の基礎知識

◎簡単に設立できるようになった


    従来の公益法人制度においては、許可主義といって、「公益に関する社団又は財団であって、営利を目的としないものは、主務官庁の許可を得て、法人とすることができる」とされていました。これに対し、新しい公益法人制度においては、一般社団・財団法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立します。これを準則主義といいます。 従来の公益法人制度における公益法人(社団法人・財団法人)の設立手続では、主務官庁の裁量が大きく、主務官庁の許可(公益性の認定など)に多大な労力を要していましたが、新しい公益法人制度における一般社団・財団法人の設立手続は簡便化され、準則主義が採用されたことで、株式会社の設立とほぼ同様の設立手続となりました。

◎2名以上の社員が必要


    社団法人は、一定の目的のために結合した人の集まりに法人格を付与したもので、一般社団法人を設立するには、設立時社員が2人以上が必要になります。社員には個人はもちろん、会社等の法人も社員になることができます。

◎事業内容に制限なし


    一般社団法人は公益法人ではありますが、事業の内容について制限がありませんので、基本的には自由に事業を行うことができます。また、法務局への登記のみで設立することができるため、さまざまな活動を行うための法人格として活用することができます。

◎利益の分配はできないが


    一般社団法人は、非営利法人の類型に属するため、たとえば収益活動などで得た利益を構成員である社員に配当金するなどの利益の分配はできません。ただし、一般社団法人として収益事業を行い利益を得ること、一般社団法人の理事に役員報酬を支払うこと、従業員に対して給与を支払うことなどは、構成員への利益の分配にはあたりませんので、問題なくできます。


2 一般社団法人設立の骨格決定

①一般社団法人の設立時社員の決定


    一般社団法人を設立するためには、設立時社員が最低2名必要になります。会社等の法人も一般社団法人の社員になることができます。
    ここでいう社員とは、一般的にいう従業員のことではなく、一般社団法人の意思決定機関である社員総会のメンバーをいいます。株式会社でいえば、設立時の発起人とか株主という立場にあたる人のことです。
一般社団法人の設立時社員が共同して法人の基本事項(一般社団法人の名称、目的、役員、機関など)を決め、これに基づいて定款を作成することになります。
    したがって、一般社団法人の設立にあたっては、まず2名以上の社員を決めなければなりません。社員は設立時には2名必要ですが、いったん設立してしまえば、後は1名になってもかまいません。

②一般社団法人の名称決定


一般社団法人の名称を決定するにあたっては、次のような制限があります。

イ    「一般社団法人」という文字を必ず入れなければならない。
ロ    一般財団法人と誤解されるおそれのある文字を使用してはならない。

ハ    銀行、病院、診療所、信託、保険などの文字はそれらの法律で使用が制限されるので、使わない方が無難。

③一般社団法人の目的決定


    一般社団法人設立の目的とその行う事業の内容を決定します。一般社団法人は、その行う事業には制限がありませんので、違法な事業や他の法律で制限されている事業以外のものであれば、自由に目的を定めることができます。
    一般社団法人は、公益目的事業を行わなければならないというわけでなく、すべての事業が収益目的事業であってもかまいません。

④主たる事務所の所在決定


    一般社団法人の住所を決定しなければなりません。定款への記載は市区町村までの記載でもかまいません。

⑤一般社団法人の機関決定


    一般社団法人の組織、つまり設置する機関と役員を決定する必要があります。一般社団法人の設立にあたり、絶対に必要な機関は、「社員総会」と「理事」です。また、任意に「理事会」、「監事」、「会計監査人」も設置することができます。

イ    一般社団法人の社員総会

    一般社団法人の社員総会は、社員を構成メンバーとする 一般社団法人の最高意思決定機関です。株式会社でいえば株主総会に当たるものです。社員総会は、 一般社団法人の組織、運営、管理その他一切の事項について決議するのが原則ですが、理事会を設置している場合には、法律及び定款に定めた事項に限り決議することになります。



ロ    一般社団法人の理事

    一般社団法人の理事は、法人の業務を執行する者で、必ず1人以上は置かなければなりません。株式会社でいえば取締役に当たるものです。各理事は一般社団法人を代表することになりますが、代表理事を定めた場合には、その代表理事のみが 一般社団法人を代表します。代表理事は、株式会社でいえば代表取締役にあたります。



ハ    一般社団法人の理事会

    一般社団法人に理事会を置いた場合、理事会はすべての理事で組織され、 一般社団法人の業務執行の決定、理事の職務執行の監督、代表理事の選任などを行います。理事会は株式会社でいえば取締役会に当たるものです。



二    一般社団法人の監事

    一般社団法人の監事は、理事の職務の執行を監査します。株式会社で言えば監査役に当たるものです。理事会もしくは会計監査人を設置した一般社団法人は、監事を置かなければならないとされています。




3 一般社団法人の設立手順

    一般社団法人の具体的な設立手続きは、次の手順で行います。

①一般社団法人の設立に必要な書類の準備


    一般社団法人の設立時社員や理事になる者は、設立手続きにおいて実印の押印と印鑑証明の提出が必要になります。設立時社員は公証人役場で定款の認証を受けるときに印鑑証明を各1通、設立時理事は法務局に設立登記の申請をする際に各1通必要になります。
    また、一般社団法人の設立登記にあたっては印鑑登録が必要であり、この印鑑登録のために法人の代表印を用意しなければなりません。登録する印鑑の大きさには制限があります。

②一般社団法人立時社員による定款の作成


    一般社団法人の定款に必ず記載しなければならない事項は次の通りです。
イ    一般社団法人の名称
ロ    一般社団法人の目的
ハ    一般社団法人の主たる事務所の所在地
二    一般社団法人の設立時社員の氏名又は名称及び住所
ホ    一般社団法人の社員の資格の得喪に関する規定
へ    一般社団法人の公告方法
ト    一般社団法人の事業年度

③公証人による定款の認証


    定款の認証とは、一般社団法人の定款が法律に従って正しく作成されているかを公証人に確認してもらう手続きをいいます。定款の認証を受ける公証役場は、設立する一般社団法人の主たる事務所がある都道府県内にあればどこでもかまいませんが、他の都道府県の公証役場ではダメです。
    定款の認証を受けるためには、定款3部、設立時社員の印鑑証明、手数料5万2000円程度が最低でも必要になります。

④定款で定めなかった場合に設立時理事の選任等


    一般社団法人の設立時理事(および監事)は、その選任後速やかに、一般社団法人の設立の手続が法令または定款に違反していないかを調査することになっています。調査の結果、もし違法又は不当な事項があった場合には、設立時社員にその旨を通知しなければなりません。ただし、この調査をしたことを証する書面は、登記申請の添付書類とはなっていませんので、設立登記申請書に添付して法務局へ提出する必要はありません。

⑤設立時理事による設立手続の法令・定款違反の調査


    一般社団法人の設立に必要な事項であって定款で定めていないものがある場合にはこれを決定します。例えば、「主たる事務所の所在場所(町名、地番など)」、「設立時役員(理事、監事)」、「設立時代表理事」

⑥一般社団法人の基金の募集、拠出


    一般社団法人の定款に基金を引き受ける者の募集をすることができる旨の定めを置いた場合は、この募集の手続きを行うことになります。ここに基金とは、一般社団法人の活動のために拠出された金銭その他の財産で、一般社団法人が拠出者に対して返還義務を負うことになります。定款に基金についての定めがなければ、この手続きは不要です。
    基金制度は、一般社団法人の設立経費や活動資金を調達するためのものですので、もし基金の募集をしない場合は、これらの経費は寄附や借入れなどでまかなわれることになります。
    なお、一般社団法人の定款に基金の定めがある場合でも、基金の総額は登記事項ではありませんので、一般社団法人の登記簿に基金についての記載はありません。


⑦一般社団法人の設立の登記


    一般社団法人の設立のための登記は、主たる事務所を管轄する法務局で行うことになります。一般社団法人の設立は、設立時理事等の調査が終わった日または設立時社員が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に登記申請することになっています。

4 一般社団法人の設立費用

    自分で設立の手続をした場合ですが、一般社団法人の設立のためには、次のように合計で約12万円の費用がかかります。
イ    公証役場での定款認証費用      約5万2000円
ロ    設立登記時の登録免許税        6万円
ハ    登記簿謄本取得費用 1通当り       1000円
        印鑑証明取得費用 1通当り        500円
    そのほか専門家に設立手続を依頼した場合には、別途報酬がかかります。
    なお、株式会社の設立時に必要な定款の印紙代4万円は、一般社団法人設立の場合には必要ありません。