ト ピ ッ ク ス 

          【平成27年度税制改正】

   -資産課税-
 ●結婚・子育て資金の贈与非課税制度の創設

祖父母や親が20歳以 上の孫や子に結婚や出産、子育ての費用を贈与する場合、贈与税を非課税とする制度が新設されます。 非課税枠は孫や子1人あたり1000万円です。20~49歳の子や孫にお金をまとめて提供した場合が対象です。 高齢者に偏る個人金融資産の世代間移転を促しつつ、少子化対策につなげるのがねらいです。
 この制度は27年度から30年度までの間に信託銀行などの金融機関に贈与を受ける子や孫名義の専用口座を作って利用する必要があります。
 非課税対象となる結婚費用は披露宴代や新居の家賃とし、300万円の上限が設けられます。出産は分娩費用のほか、不妊治療費などが対象となります。 子育て費用はベビーシッター代、保育料、小学校に入学するまでの病気の治療費などです。
 結婚式場や病院、保育園などから受け取った領収書を金融機関に提出すれば、口座から非課税でお金を引き出せるようになります。
 50歳になる前にお金を贈った親や祖父母が死亡すれば、残額が遺産とみなされて相続税の課税対象となります。
 また、死亡しなくても、贈与を受けた子や孫が50歳になった時点で口座に残っているお金には贈与税が課税されることになります。

●教育資金の贈与非課税制度の延長

授業料や習い事の月謝などの資金を贈与した場合は1人あたり1,500万円までが非課税になる教育資金の非課税贈与制度は、 27年末としていた期限を30年度末まで延長されます。

●住宅資金の贈与非課税制度の拡充

親や祖父母から住宅購入資金をもらったときにかかる贈与税の非課税枠が、 これまでの1000万円から27~29年に最大3000万円までの間で拡大されます。
 これまで、非課税枠は、省エネや耐震性能に優れた住宅、バリアフリー住宅の購入には1000万円まで認められており、 26年末が期限となっていました。
 これが改正により非課税枠は27年1月から1500万円に拡大されます。 28年1~9はいったん1200万円に下げ、28年10月~29年9月は3000万円に、29年10月~30年9月は1500万円、30年10月~31年6月は1200万円となります。
 一般住宅はいずれの時期も、省エネ住宅などより一律に500万円低い金額となります。
 冷え込んでいる住宅需要を刺激するとともに、29年4月の消費税率10%への再増税を挟み、駆け込み需要と反動減の差を縮めるねらいがあります。





              脱税あばくために国税庁が
         外国から提供を受けた情報の数明らかに


                                      2015年11月23日

このほど、今年6月までの1年間に租税条約等に基づいて国税庁が外国と情報交換を行った実績が明らかになりました。 インターネットを使った国際取引の増加にともない、軽課税国に現金などを移転する動きが盛んになっていることが浮き彫りとなっています。

国税庁のまとめによると、租税条約に基づいて個別の納税者の情報提供を相手国に要請する「要請に基づく情報交換」で、 国税庁が外国へ要請した件数は526件(前年比26.9ポイント減)でした。 その7割以上がアジア・オセアニア地域に対するものだったとしています。 逆に、外国から国税庁に要請のあった件数は125件(同17.9ポイント増)でした。

この要請に基づく情報交換によって、国税庁は「外国税務当局から、海外法人の決算書及び申告書、登記情報、契約書、インボイス、 銀行預金口座、海外法人における経理処理が分かる資料のほか、 外国税務当局の調査担当者が取引担当者に直接ヒアリングした内容などの情報が提供されている」と説明しています。

一方、自国の納税者に対する調査等の際に入手した情報で外国税務当局にとって有益と認められる情報を自発的に提供する 「自発的情報交換」では、国税庁が外国へ提供したものは317件(同95.4ポイント減)でしたが、 外国から国税庁が受け取ったものは1,258件(同58.9ポイント減)となっています。 脱税行為や租税回避行為などが想定される情報については、 国際的な協力の下で自発的な情報交換が盛んに行われていることが分かるデータと言えます。

さらに、法定調書から把握した非居住者等への支払い(配当、不動産所得、無形資産の使用料、給与・報酬、キャピタルゲイン等) に関する情報を、支払国の税務当局から受領国の税務当局へ一括して送付する「自動的情報交換」については、 国税庁が外国へ提供したものは約13万7千件(同8.7ポイント増)でした。 そして、外国から国税庁が受け取ったものは約13万2千件(同0.8ポイント減)となっています。

インターネットを利用した国際的な取引が盛んになってきていることや、相続税の課税強化を受けて資産を海外に移転する資産家が増えていること、 企業がタックスヘイブンに利益を移して法人税の課税逃れを行うケースも少なくないことから、 他国との情報交換が国税庁にとって重要な調査資料となっていることが伺えます。

 



    事例集「相続税の申告書作成時の誤りやすい項目」を公開
                   -国税庁-

                                      2015年11月16日

基礎控除額を約半減するという相続税の増税により、一挙に申告対象者が増えたことから、このほど、 国税庁が「相続税の申告書を作成するときに誤りやすい項目」について、事例形式で紹介したページを同庁のホームページにアップしました。

今年1月1日以後に発生した相続については、これまで(5千万円+1千万円×法定相続人の数)だった基礎控除額が、 (3千万円+600万円×法定相続人の数)に引き下げられました。これにより、東京都23区内にちょっとした土地建物を持つ人ならば、 相続税が課税されることとなり、いま多くの税理士が「申告書の作成は必ず税理士に相談してください」と呼びかけています。

しかし、相続税は現金一括納付が原則となっていることから、相続財産が不動産ばかりで現金が少ないという人などは、 税理士報酬まで払えないことから、自力で申告書を作成せざるを得ません。国税庁では全税務署に相談窓口を設けているわけですが、 実際に提出された申告書を見てみると「税法の適用ミスなどが必ずある」(税務署資産税課)と言われています。

そこで、このほど国税庁では、「相続税の申告書を作成するときに誤りやすい項目」について、 事例形式で紹介したページを同庁のホームページにアップしました。
 具体的には、「被相続人の一親等の血族以外の人が相続財産を取得した場合には、 その人の相続税額の2割に相当する金額を相続税額に加算しなければならないのに、加算していなかった」という事例や、 「死亡したときに支給されていなかった年金を遺族が請求し支給を受けたわけだが、その支給金額は遺族の一時所得(所得税)の対象となるのに、 相続税が課税される相続財産の中に含めていた」という事例など、全部で14事例を紹介しています。

 



      建物付き土地と更地との交換で建物は特例対象外
               東京国税局が見解示す

                                      2015年11月09日

個人が土地や建物を売却するときに譲渡所得税の節税手法として使われるのが、固定資産の交換特例です。 ところが、土地とその土地の上にある建物は一対の資産として交換特例が適用できると思っている人がいます。
このほど、東京国税局が同じような勘違いをしている納税者からの質問を正したことが話題となっています。

固定資産の交換特例とは、固定資産である土地や建物など同じ種類の資産を他の者と物々交換したときに譲渡がなかったものとされる制度です。
ただ、土地などを交換するとき、道路付けなどで必ずどちらかの立地条件が良いもので、同額となるケースはほぼありません。 そこで、評価額が低い土地を手放す側が、評価額が高い土地を手放す側に、その評価額の差額を支払うことで交換取引は成立します。

なお、交換の相手方から交換差金を受け取ったときは、その交換差金に対しては譲渡所得として所得税がかかることになっています。
しかも、交換差金の額が交換で譲り渡す資産と譲り受ける資産とのいずれか高い方の価額の20%を超えているときは、 交換した資産全体について固定資産の交換の特例は適用できないことになっています。

そのため、このほど東京国税局に問合せをした納税者は交換差金の支払を避けるため、土地だけでなく、 その土地の上にある建物を一対とみなして譲り渡したうえで、交換特例を適用しようと考えました。 しかも、国税庁が公表している「一つの資産のうち一部を交換、他の部分を売買とした場合は、その売買代金が交換差金になる」 という取り扱いの活用を考えついたわけです。

例えば、譲り渡す土地の評価額が3,900万円で、譲り受ける土地の評価額が5,000万円だとします。 そして、譲り渡す土地の上の建物の評価額が1,000万円だった場合は、その建物を売却すれば、 今度は1,000万円の交換差金が交換相手からもらえるわけです。
また、土地と建物を一の資産とみなすことで交換特例を適用する場合の交換差金の限度額をクリアーすることができます。

所得税法第58条第1項各号に掲げる資産の種類の区分ごとの資産をいう」として、 土地とその土地の上の建物を一の資産とみなしてはならないという見解を示しています。 よって、前出の事例では固定資産の交換特例が適用できなくなるわけです。

 



             平成26年分の国外財産調書。
            提出人数がまたまた増えて8,184人に

                                    2015年10月26日

国税庁が、平成26年分の国外財産調書の提出状況をまとめました。
それによると、総提出件数・総財産額はともに前年度を上回り約2600件増えています。

国外財産調書の提出する制度は、その年の12月31日においてその価額の合計額が5千万円を超える国外財産を有する居住者は、 翌年3月15日までにその財産の種類、数量及び価額などを記載した「国外財産調書」を、 税務署長に提出しなければならないとされているものです。
 この調書についてこのほど国税庁が今年7月までの1年間のものをまとめたわけですが、 国外財産調書の総提出件数は8,184件で、その総財産額は3兆1,150億円となり、 国外財産調書提出制度が開始された平成25年度と比べると、それぞれ2,645件、6,008億円増加しました。

申告された財産の種類別総額では、有価証券が1兆6,845億円で最多となりましたが、 構成比で見ると有価証券は前年度の62.1%から54.1%に低下し、それ以外の預貯金、 建物、土地、貸付金等の構成比がいずれも上昇しました。中でも、預貯金と建物について2%前後増えた点が注目されます。
 国外財産調書提出制度については、海外にある相続財産の申告漏れが深刻化する中で、 国外財産の保有状況を正確に把握するため平成26年1月より導入されたものです。

調書不提出や虚偽記載には罰則が課されることとなっていますが、 国税庁では「制度開始初年度については制度の周知期間確保の観点から罰則の適用がなかったことを考慮すると、 今回の提出件数の増加は僅かなものであり、未だ多くの提出すべき人が提出していない状況にある」と見ています。

 



               マイナンバー制度スタートで
        総務省が来年の所得税確定申告期について警告

                                    2015年10月13日

総務省が個人番号カードの交付申請のタイミングに対して注意を呼びかけています。 住民基本台帳カードではなく、新たに個人番号カードを使って、e-Tax(国税の電子申告システム)を 利用して来年の所得税と個人事業者の消費税の確定申告を行う場合に、支障が出る可能性があるとしています。

e-Taxを使って税務署に国税の各種申告を行う場合、電子認証機関が発行する住民基本台帳カードなどの ICカードに格納されている電子証明書が必要です。
 しかし、住民基本台帳カードについては、今年12月末をもって各市区町村は交付を終了し、 来年1月からマイナンバー制度上の個人番号カードに切り替えて交付することになっていて、 電子証明書もその個人番号カードに標準的に格納されることになっています。
 ただし、「個人番号カード」の交付開始以前に発行された住民基本台帳カードに格納された電子証明書は、 その有効期間内(発行の日から起算して3年間)であれば継続して使用することができます。

こうしたマイナンバー制度の導入時に発生することが考えられるトラブルとして、 総務省では「個人番号カードの交付申請については、今年10月から可能だが、申請が集中した場合、 カードの作成に時間を要し、市区町村窓口における交付が遅れる可能性がある」として注意を呼びかけています。

例えば、現行の住民基本台帳カードに搭載された電子証明書が本年12月中に有効期間満了で失効する人が、 個人番号カードに搭載されている電子証明書で確定申告を行おうとして個人番号カードの交付申請を行った場合、 マイナンバー制度開始当初に交付申請が集中することが予測されることから、 場合によっては確定申告を行う期間に交付が受けられない恐れがあるわけです。
 というのも、今年10月から個人に郵送されるマイナンバーは紙製の通知カードに記載されていて、 身分証明書としては使えません。よって、任意で住所地の市区町村へ出向いて個人番号カードに切り換えることで、 その個人番号カードが運転免許証などと同じように身分証明書として使えるようになるからです。

なお、総務省では「個人番号カードの交付開始に伴い、本年12月23日以降は住民基本台帳カードに搭載される 電子証明書の発行及び更新はできなくなる。現行の住民基本台帳カードに搭載される電子証明書の更新を希望する方は、 本年12月22日までに、市町村の窓口で手続きをしてください」としています。

 



          相続税の申告のためのチェックシートを
                国税庁がHPにアップ

                                    2015年09月07日

このほど、国税庁が相続税の申告のためのチェックシート(平成27年分以降用)を同庁のホームページにアップしました。 同チェックシートは、これまで東京国税局が同国税局のホームページで 毎年相続税の申告対象者に提供してきたものをベースにして作られたものです。

相続税の申告のためのチェックシートは、自分が相続税の申告を行う必要があるかどうかを見極めるためのものではなく、 すでに相続税の申告対象となっている人が実際に申告書を作成するときに誤りやすい事項について チェックポイントをまとめたものです。

例えば、相続財産について検討すべきものとして、不動産を取り上げて「他の市区町村に所在する不動産はありませんか」 と検討内容を提示していて、それについては固定資産税評価証明書や登記事項証明書等を取り寄せて確認するよう求めています。 そして、確認を終えたら必ずチェックを入れるようにし、全項目を確認し終えたら、 作成した申告書と一緒に税務署に提出することになっています。
 今回国税庁がホームページにアップしたチェックシートは、平成27年分以降に相続税の申告を行う人を対象にしたもので、 今年中に相続により財産を取得した人たちから利用するものです。
昨年分までのものについては、東京国税局のホームページ(http://www.nta.go.jp/tokyo/ )に掲載されています。

東京国税局だけが公表していた相続税の申告のためのチェックシートを、 国税庁がわざわざ手直しして同庁のホームページに掲載したことについて、 多くの税理士が「今年から相続税の課税対象者が全国規模でかなり増えることを国税庁が想定しているからだ」 と説明しています。

 



           資産家にとって無視できない存在。
           国税庁がPRする「財産債務調書」

                                    2015年07月27日

資産家らが敬遠する「財産及び債務の明細書」(財産債務明細書)が、大幅に見直されたことを国税庁がPRしています。 未提出者へのペナルティまで設けられているだけに、無視できない制度改正です。

財産債務明細書は、これまで年間所得金額が2千万円を超える人に対して、 その年の12月31日時点で所有する土地などの財産と借入金などの債務を記載して翌年の3月15日までに税務署に. 提出しなければならないという資産家にとっては厄介な書類です。

同明細書が平成27 年度税制改正で、その名も「財産債務調書」と改められ、制度も大幅に見直されました。
 具体的には、提出対象について「所得税等の確定申告書を提出しなければならない方」で、 .「その年分の総所得金額及び山林所得金額の合計額が2 千万円を超える方」という点について変わりはありません。
 変わったのは「その年の12 月31 日において、その価額の合計額が3億円以上の財産、または、 その価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産を有する方」について「財産債務調書を提出しなければならない」 とされた点です。「国外転出特例対象財産」とは、所得税法に規定されている有価証券や未決済信用取引、 未決済デリバティブ取引に係る権利のことです。

また、財産債務明細書では、未提出や適当に記載する人が多かったことから 「財産債務調書を提出期限内に提出した場合には、 財産債務調書に記載がある財産又は債務に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときであっても、 過少申告加算税等が5%軽減される」とされました。
 逆に、財産債務調書の提出が提出期限内にない場合や提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産又は 債務の記載がない場合は「その財産又は債務に関して所得税の申告漏れ(死亡した方に係るものを除く)が生じたときは、 過少申告加算税等が5%加重される」というペナルティも設けられています。

 



         福島の原発事故による避難指示区域内の
       土地の相続税評価方法に対する意見は1件だけ

                                    2015年07月06日

国税庁が募集していた「平成27年中に相続等により取得した原子力発電所周辺の避難指示区域内に存する土地等の評価について」 の法令解釈通達(案)に対する意見は、たったの1件しかったことがこのほど分かりました。

東日本大震災で福島の原子力発電所が爆発事故を起こし、平成27年1月1日時点でも帰還困難区域や居住制限区域、 避難指示解除準備区域に指定されている土地が存在します。 そういった避難指示区域内の土地は、売買実例などがないため具体的に把握することは非常に難しいものがあります。

しかし、避難指示区域内の土地といえども相続税の課税対象となっている以上、 国税庁としては財産として適正に評価額が算定できるようその計算方法を示す必要がありました。
 そこで、国税庁は「平成27年中に相続等により取得した原子力発電所周辺の避難指示区域内に存する土地等の評価について」 と題して法令解釈通達(案)を取りまとめて、平成27年4月28日から平成27年5月27日までホームページ等を通じて意見を募集していました。

その募集の結果がこのほど発表されたわけですが、寄せられた意見はたったの1件だけでした。 その意見の内容は、同法令解釈通達(案)で示されている「平成27年1月1日から平成27年12月31日までの間に相続、 遺贈又は贈与により取得した避難指示区域内の土地等の価額については、 その価額を『0』として差し支えない」という部分に対するもので、 「評価額は『0』ではなく『マイナス』評価すべきではないか」としていました。

これに対して国税庁は「避難指示区域内の土地等については、使用収益制限などによって減価していると認められますが、 その減価の程度を具体的に把握することは困難であることから、評価の安全性を十分に考慮し、 その価額を『0』として差し支えないものとするものです」と回答し、公表した通達(案)の修正は行わないことにしています。

 



          生存給付金の受取人が誰でもOKならば
                贈与税の課税対象
             新終身保険で東京局が見解

                                    2015年06月15日

1,000万円の保険料の払い込みが満期になるまで生きていれば5年に1回200万円の生存給付金がもらえるかんぽ生命の終身保険が 人気を呼んでいますが、このほど東京国税局が、ある生命保険会社が発売を予定している新種の生存給付金付特別終身保険について、 税の取り扱いを明らかにしました。

東京国税局に税の取り扱いを問い合わせていた今回の生命保険会社は、 終身保険に生存給付金を組み込んだ保険料払込方法が一時払の生存給付金付特別終身保険の販売を予定しています。 この終身保険における生存給付金は、「生存給付金支払期間中の毎年の保険年度の満了時における被保険者の生存」を 事由として支払われるもので、珍しいのはその生存給付金が、 保険契約者があらかじめ指定した受取人に支払われることになっていることです。
 また、生存給付金の受取人については、保険契約者を含め1名だけを任意で指定することになっていて、しかも、 その指定後も保険契約者が生命保険会社に通知するだけで、その受取人を変更することができる仕組みになっていることです。
 ただし、生存給付金支払期間の途中で被保険者が死亡した場合、 被保険者が生存していた場合に支払われる残りの期間に係る生存給付金については、死亡保険金として、 保険契約者があらかじめ指定した死亡保険金の受取人に支払われることになっています。

問題は、生存給付金受取人が保険契約者以外の場合、その生存給付金受取人に贈与税が課税される可能性があるということでした。
同生命保険会社は東京国税局に問い合わせるにあたり「本件生存給付金については、定期金給付契約に関する権利、 すなわち契約によりある期間定期的に金銭その他の給付を受けることを目的とする債権を取得し、 これを行使することにより受け取るものではなく、 本件生存給付金支払期間中の毎年の保険年度の満了時における被保険者の生存という支払事由(保険事故)の発生の都度、 本件生存給付金の受取人が本件生存給付金を保険料負担者(保険契約者)から贈与により取得したものとみなし、 贈与税の課税対象になるものと解するのが相当である」との見解を示しました。

このほど、その見解を東京国税局が「ご照会に係る事実関係を前提とする限り、 貴見のとおりで差し支えない」と追認したわけです。

 



          国税庁が財産評価基本通達を改正。
       非上場株式の評価に用いる計算方式を見直す

                                    2015年04月27日

このほど、国税庁が財産評価基本通達を改正し、取引相場のない株式を相続税評価する場合に用いる純資産価額方式を見直しました。 これは、平成26年度税制改正で復興特別法人税が1年前倒しで廃止されことによるものです。

取引相場のない株式とは、死亡した父親が経営していた会社の株式が証券取引所に上場していない場合の株式のことで、 その株式の相続税評価額を算定するときに用いられるものが純資産価額方式です。
 一般的に純資産価額方式で計算すると、株価は帳簿価額よりも高めになるといわれています。 とくに、年間取引金額が6,000万円未満の中小企業の株式は、この方式を用いる比重が大きいため注意しなければなりません。

純資産価額方式の具体的な計算式は、(総資産価額-負債の合計額-評価差額に対する法人税額等に相当する金額) ÷発行済株式数で1株当たりの株価を算定することになっています。今回改正されたのは、 その計算式の中の「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」の部分です。
 「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」は、「相続税評価額による純資産価額」から「帳簿価額による純資産価額」を 控除した残額に「法人税、事業税、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合」(法人税率等の合計割合)を 乗じて計算した金額のことです。

改正前の法人税率等の合計割合は42%でした。平成26年度税制改正により、復興特別法人税が1年前倒しで廃止されたため、 その分、法人税率等の合計割合も減ることから、国税庁は40%に改正しました。

 



         相続があった年に遺産分割があった場合の
           消費税の納税義務の判定で新見解

                                    2015年04月20日

このほど大阪国税局が、相続があった年に遺産分割が行われた場合、民法の規定に関係なく法定相続分に基づいて 消費税の納税義務の有無を判定してもよいとする取扱いを明らかにしました。
今回の取り扱いは、課税売上高が経常的に1,000万円を超える事業を共同で承継した複数の相続人のうちの一人(以下、A) から大阪国税局にあった問い合わせに答えたものです。

Aの父親は不動産賃貸業を営んでいましたが、平成26年2月に死亡し、Aを含む7名が共同相続人として事業を相続。 その後、同年中に遺産分割協議が成立し、Aは事業の3分の2を、残る3分の1はAの妻が承継しました。
 問題は、遺産の分割が行われるまで共同相続人が共同して事業を営んでいたので、 平成26年分に係る消費税の納税義務の有無を判定するに当たり、 消費税法基本通達1-5-5《共同相続の場合の納税義務》を適用して被相続人の基準期間(平成24年分)における課税売上高 (1,700万円)を法定相続分(AとAの妻は12分の1、Aの母親は2分の1)で按分し、消費税法の規定に従い判定した結果、 AとAの妻、Aの母親の3人とも免税事業者に該当すると判断したことでした。

消費税法基本通達では、遺産分割が行われるまでは法定相続分で按分することとされています。 そこで、Aは納税義務の判定時点において遺産未分割であったことからこの取扱いに基づき納税義務を判定、 1,700万円×1/12≠141万円で1,000万円以下となり、納税義務はないと判断したわけです。
 しかし、民法では、遺産分割は相続があった日に遡ってその効力を生ずることとされています。 この規定を適用すると、Aは平成26年2月に被相続人が営んでいた事業に係る相続財産については、 AとAの妻が事業を承継したため、納税義務の再判定を行うことになり、1,700万円×2/3≠1,133万円で1,000万円を超えることから、 納税義務は免除されないことになってしまうわけです。

Aは、「判定時点での適正な事実関係に基づき消費税関係法令等の規定に従って納税義務が判定されたものである場合には その判定が認められるものと解するのが相当であると考える」と大阪国税局に説明。 これに対して、大阪国税局は「ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません」と回答しています。
 これにより、相続があった年の消費税の納税義務については民法の適用は無く、 消費税法基本通達に示されている法定相続分に基づいて消費税の納税義務を判定してもよいとされたわけです。

 



         被保険者の死亡後に発生する医療保険の
     解約返戻金支払請求権の相続税の取り扱い明らかに

                                    2015年03月30日

ある保険会社が売り出している新しい医療保険に対して、このほど、東京国税局が相続税の取り扱いを明らかにしました。
 保険契約者と被保険者が同一人の場合で、被保険者の死亡に伴い支払われる解約返戻金相当額の支払請求権については、 本来の相続財産として課税されるとしています。

東京国税局に問い合わせていた保険会社が売り出している医療保険とは、被保険者が入院したときや、手術を受けたとき、または、 放射線治療を受けた場合に保険金が支払われる(保険事故)というものです。被保険者の死亡では保険金が支払われない形になっています。
 ただし、被保険者が死亡した場合には、契約は消滅するものの、解約返戻金があるときは、 契約の保険契約者に解約返戻金相当額の返戻金を支払うことを約款で定めています。 解約返戻金があるときとは、保険料払込期間満了後において、保険契約者が死亡、または、保険契約者が解約することにより発生するものです。

今回問題となったのは、保険契約者と被保険者が同一人で保険契約者(=被保険者) が死亡したときに発生する解約返戻金相当額の返戻金の支払請求権でした。
保険契約者の財産を相続する人たちにとって、支払い請求権もみなし相続財産として、 法定相続人に与えられている500万円の非課税枠が適用されるのならば良いのですが、東京国税局では、保険金の給付事由(保険事故)に、 被保険者の死亡は含まれていないことから、被保険者の死亡により支払われる本件解約返戻金相当額の返戻金は保険金とは認められないとしています。

よって、今回の医療保険に関する解約返戻金相当額の返戻金の支払請求権については、 保険契約者である被相続人の本来の相続財産として相続税の課税対象となると解するのが相当であるとされました。

 



                国税庁が作成した
    「相続税の申告要否の簡易判定シート」が好評を博す

                                 2015年03月23日
国税庁ホームページ内にある相続税・贈与税解説集の中に掲載されている「相続税の申告要否の簡易判定シート(平成27年分用)(PDF/2,160KB)」 が注目を集めています。
 相続税の仕組みをまったく分からない人でも、自分に相続税が課税されるかどうかが簡単に導き出せるとして好評を博しています。

今年から相続税がかからない範囲である基礎控除額(課税最低限)が「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」から 「3,000万円+600万円×法定相続人の数」へと引き下げられました。
これにより、課税ベースが拡大するため、 課税割合はこれまでの4%から6%(東京23区平均では9.6%が14.4%)に上昇すると予測されています。

そのため、危機感を覚えているのが地価の高い都心部に住宅などの不動産を持つ人たちです。
とくに、税理士との接点のない資産家やサラリーマンなどは、相続税の仕組みが非常に難しいため自分が課税対象かどうかもわからず、不安な日々を送っています。
 そこで、そのような人たちのために国税庁が作成したのが「相続税の申告要否の簡易判定シート(平成27年分用)(PDF/2,160KB)」です。

国税庁のホームページのトップページにある「相続税・贈与税解説集」の中に掲載されているもので、 同判定シートの文字をクリックしてダウンロードを開始すると、財産を相続する人の立場で、 自分が払う相続税がおおよそいくらになるかが導き出せるシート(書き込み可能なPDFファイル)がパソコン画面に表示されます。
 あとは、シート上の質問の答えを?で指定された枠内に記入するだけで、基礎控除額や相続財産及び債務の確認が行われ、 最終的におおよその税額が自動計算され、相続税の申告が必要かどうかが判定される仕組みになっています。
※ただし、相続税には小規模宅地の評価減額特例など優遇措置がいくつかあるため、正確な相続税額については、税理士に相談する必要があります。

 



        国税庁が幼稚園営業を使った相続税の
            節税規制通達を緩めたワケ 

                                 2015年03月02日
このほど、教育用財産に対する相続税の非課税制度に関する取り扱い通達を国税庁が改正しました。 今年から相続税の課税強化が始まったことから、その関連で非課税枠を縮小したのかと思われましたが、 そうではなく逆に非課税枠を拡充しています。

死亡した人(被相続人)が私立の養護学校や幼稚園などを営んでいた場合、 相続人はその事業を継承する場合だけでなく廃止する場合でも所轄の税務署に届け出なければなりません。
 そして、その事業を承継する場合について、相続税法では一定の要件に該当すれば、 当分の間その事業用の土地等について相続税がかからないとしています。 これが教育用財産に対する相続税の非課税制度と呼ばれるものです。

かつて、同制度を悪用して相続税を回避する手法が横行したことから、2007年に国税庁が取り扱い通達で一定の制限を行いました。 それが今回改正を行った「教育用財産に対する相続税の非課税制度における幼稚園事業経営者に係る家事充当金限度額の認定基準等について」 と題する通達です。

今年から相続税の課税強化が始まったことから、またしても教育用財産に対する相続税の非課税制度の引き締めを行ったのではないかと 思われましたが、通達の改正内容を見てみると、相続税の非課税枠である 「家事充当金限度額の幼児又は園児一人当たりの基準単価を用いて計算した基準額」の「園児一人当たりの基準単価」が 1.25%ほど引き上げられていました。

園児一人あたりの基準単価は、国家公務員の給与制度を準用していて、じつは、 昨年の人事院勧告で公務員の給与の地域間格差の是正を名目に俸給表の改定が行われ、 平成27年4月から地域手当が実質的に引き上げられることから自動的に同基準単価もアップしたわけです。

 



              空き家対策特措法関連で
       東京都が固定資産税の納税者情報横流しを公言 

                                 2015年03月02日
空き家対策特別措置法が先月一部施行されたことを受け、このほど東京都が都民に対して、 各特別区から固定資産税に関する情報提供依頼があった場合は、 速やかに管轄の都税事務所から対象となる空き家とその敷地の所有者の氏名や住所、電話番号などを提供すると報じました。

適切に管理されていない空き家は、防犯や防災、景観等の観点から近隣住民に深刻な影響を及ぼしています。
また、総務省が2013年に行った調査では、全国の総住宅数に占める空き家数の割合は13.5%と過去最高を記録しました。

こうしたことから政府は、放置され荒廃した空き家の撤去を促すために空き家対策特別措置法を制定したわけです。 同法は、市町村長に空き家への立入調査権を与えたほか、空き家の情報収集のために、 固定資産税の課税目的で保有する納税者情報の内部利用を認めています。

原則として、固定資産税はその固定資産が所在する市町村が課税するため、固定資産税に関する情報は市町村が保有しています。
 しかし、東京23区(特別区)については特例として東京都が課税することになっていて、固定資産税に関する情報は都が保有しています。
 よって、東京都主税局は、特別区から依頼があったときには速やかに固定資産税に関する情報を提供すると報じたわけです。

なお、空き家増加の背景には固定資産税の減税措置の問題が存在することから、空き家対策特措法では、 自治体が危険であると判断した空き家(特定空き家)について、 面積200㎡までの部分の固定資産税の課税標準が6分の1まで軽減される住宅用地特例の適用を廃止できる措置もとられています。

 



   被後見人の自宅売却時にかかる裁判所への申し立て費用で
               東京国税局が新見解 

                                 2015年02月16日
成年後見人が面倒を見ている被後見人の所有する自宅の土地建物を売却するときにかかる家庭裁判所への申し立て費用について、 このほど東京国税局がその売却した土地建物の譲渡費用として計上しても良いとする見解を示しました。

成年後見人制度とは、精神障害や認知症などにより判断能力が十分でない人が、不利益を被らないように家庭裁判所に申し立てをして、 保護してくれる人(成年後見人)を付けてもらう制度のことです。
ただ、成年後見人であっても、被後見人が現金をあまり持っていない場合は、身銭を切るのではなく、 被後見人の所有する資産を売却して得たお金を被後見人の生活費に充てることになります。

今回、東京国税局が取り扱った事案は、被後見人の生活費をまかなうために被後見人の自宅の土地建物を売却せざるを得なかった 成年後見人からの問い合わせに応えたものです。
 民法では、被後見人が所有している居住用不動産を売却するときには、家庭裁判所に申し立てて判断を仰ぐことを義務づけています。
したがって、被後見人の居住用不動産を売却するときには、絶対に家庭裁判所の許可が必要であって、 その裁判所への申し立て費用は居住用不動産を売却するときに必ず発生する費用なのです。

一方、居住用不動産を売却した時には、税務署に譲渡所得税の申告をしなければなりません。
そして、納める譲渡所得税は、居住用不動産の売却代金から売却する際にかかった費用(譲渡費用)を差し引いて算出します。
すなわち、裁判所への申し立て費用も譲渡費用ならば納める税金が少なくなるわけです。

東京国税局としては、譲渡費用を極力抑えたいところですが、 家庭裁判所の許可がなければ被後見人の居住用不動産を売ることができないことから、問い合わせてきた成年後見人が示した 「裁判所への申し立て費用も譲渡費用である」とする見解を東京国税局は容認しています。

 



 成年後見人が受け取る報酬の計上時期で名古屋国税局が新見解

                                 2015年02月09日
成年後見人が、その後見事務に対する報酬をいつ受領したことにすればよいのか、このほど名古屋国税局が 「家庭裁判所による審判の告知によってその効力が生じた時」とする見解を示しました。

成年後見人とは、精神障害者である成年被後見人の財産を管理し、 その財産に関する法律行為について成年被後見人を代表するなどの後見の事務を行う人のことです。 税理士などがその任にあたることができることになっていて、報酬を受け取れることも民法で定められています。

今回、名古屋国税局が、成年後見人が成年被後見人から受け取った後見事務に対する報酬の計上時期について見解を示したわけですが、 その前提として、成年後見人は給与所得者であり、受け取った報酬は雑所得として確定申告することになっていました。
雑所得である以上、他人のお手伝いをして得た報酬(人的役務の提供による利益)の収入すべき時期は「役務提供を完了した日」 と法律で定められています。したがって、成年後見人の場合は、成年被後見人が判断能力を取り戻すか、または、 亡くなるまで成年後見人として責任を負うと考えられることから、役務提供の完了した日は、 その任期満了日である成年被後見人の死亡日などになると思うものです。

しかし、今回問い合わせてきた人が家庭裁判所の審判により報酬が確定し、その告知を受けて成年後見事務の報酬を得ていることから、 名古屋国税局は「その審判の告知によってその効力が生じた時において収入すべき事由が生じたものとして取り扱うことが相当である」 という見解を示しました。

 



       定期借地権保証金の経済的利益の課税に係る
            平成26年分の適正な利率明らかに


                                 2015年02月09日
定期借地権を設定した際に預かった保証金から得られる経済的利益の課税に係る平成26年分の適正な利率を、 国土交通省が国税庁との話し合いにより決定し、公表しました。

定期借地権の設定に伴って賃貸人が賃借人から預かる保証金は、賃借人から返還請求があるまでは、 事業投資や金融投資の運用資金に充てることができることになっています。
 しかし、保証金を無利息で預かっている場合には、経済的利益を受けることになるため、この経済的利益に対して課税する必要性が生じます。
 例えば、銀行口座に預金している場合や金銭信託などに運用している場合には、 利息等から所得税が源泉徴収されるので経済的利益を気にする必要はありません。
 しかし、不動産所得や事業所得を生むための資金とした場合や自宅の改修など個人的な目的に使用した場合には、 その経済的利益の額をどのように算定するかが問題となります。

そこで、政府は保証金に「適正な利率」を乗じた金額を経済的利益の額と定め、これに所得税を課税することにしています。 この適正な利率は、10年長期国債の平均利率によることとなっており、平成26年度中の同利率が0.57%であることから、 国税庁は、平成26年分の適正な利率を過去最低となる0.5%としました。

この結果、保証金が事業等の運転資金や事業用資産の取得資金として運用されている場合について、 経済的利益の額の計算に用いられる適正な利率は、平均的な長期借入利率の他、0.5%としても差し支えがないことになります。
 なお、算出された経済的利益の額は、各年分の不動産所得の収入金額と必要経費に同額ずつ算入されることになるため、課税関係は発生しません。
 また、上記の場合に該当せず、かつ、保証金が預貯金や公社債、貸付信託等の金融資産に運用されている場合以外のときについては、 適正な利率を0.5%として求めた経済的利益の額を、各年分の不動産所得の収入金額に算入することになります。

 



         減額更正後の税務調査による増額更正で
           延滞税の取り扱いを改正―国税庁-


                                 2015年01月26日
昨年12月12日の最高裁の判決を受け、このほど国税庁が国税の延滞税の取り扱いを改正しました。 また同時に、国税庁では判決が下された同様の事例の把握を全国の国税局・税務署に指示。 改正後の取り扱いを適用して納めすぎている延滞税の還付を行うとしています。

最高裁が取り扱った事件は、相続税を法定納期限内に申告・納付した後、申告した税額が多すぎたとして更正の請求を行った納税者に対し、 税務署がいったんは相続税の減額更正を認めながら、その後に、 税務調査を行って再び相続財産の評価の誤りを理由に当初の申告額に満たない増額の更正処分を行ったというものです。
 このときに賦課した国税に係った延滞税について、最高裁は「納付の不履行による未納付の国税に当たるものではない」として、 「延滞税は発生しない」と判断しました。
 最高裁はその理由として、①増額更正後の相続税額は当初の申告額を下回るものであり、 その増額された税額に相当する部分はいったん納付されていた点、②延滞税の発生原因となる未納付の状態は、 所轄税務署長が認めた減額更正処分により作られ、納税者はこれを回避できなかった点、 ③所轄税務署長が相続財産の評価の誤りを理由に減額更正の処分を認めたにも関わらず、 自らその処分内容を覆した点などを挙げ、「延滞税の発生は法において想定されていないものとみるのが相当である」と述べています。

こうした判断を受け、このほど国税庁では「当初の申告額に満たない増額の再更正処分等によって新たに納付すべきこととなった国税について、 延滞税は課されない」という取り扱いを定めました。
 そして同時に「過去に本事例と同様の事例によって延滞税が課された納税者に対しては、税務署などで確認次第、 延滞税の再計算及び還付手続を行い、通知書を送付する」としています。

 



     空き家に対する固定資産税の増税に資産家たちが注目


                                 2015年01月19日
高齢者の資産家を直撃する固定資産税の増税がクローズアップされています。 このほど政府が閣議決定した平成27年度税制改正大綱で「空き家は課税標準の特例措置から除外する」とされたからです。

1月14日、政府が平成27年度税制改正大綱を閣議決定しました。 法人課税の軽減や贈与税の優遇措置の拡充などが話題となっていますが、資産家の間で問題となっているのが固定資産税の増税です。
 倒壊や失火などの危険性の高い老朽化した空き家対策として、 固定資産税が軽減される特例の対象から空き家を除外する改正が盛り込まれたからです。 管理が行き届いていない空き家の撤去を促し、空き家周辺の環境保全や治安を保つことが狙いだと言われています。

住宅地に対する固定資産税の課税標準の特例とは、200㎡以下の住宅用地について、 課税標準が固定資産評価額の6分の1(16.7%)に減免され、200㎡を超える部分については3分の1(33.3%)に減免されるという制度です。
 都市計画税も200㎡以下の部分は3分の1に減免され、200㎡を超える部分は3分の2に減免されることになっています。

これまでは、家屋を取り壊して更地にしてしまうと、特例が適用されなくなるため、 両親の死亡などによってアパートなどを相続しても、節税目的で空き家のまま放置する所有者も少なくありませんでした。 あわよくば新たな入居者が現れれば、賃料を生活の足しにできるという期待もありました。しかし、これからはそうはいかなくなるわけです。

 



   東京23区内の固定資産税の軽減措置。平成27年度も継続

                                 2015年01月19日
東京都主税局が、東京23区内の土地を対象とした固定資産税・都市計画税の軽減措置の特例を平成27年度も継続することを決定しました。
現在、東京都では23区内の土地に課税する固定資産税と都市計画税について次の3つの措置を講じています。

一つ目は、小規模住宅用地に対する都市計画税の軽減措置です。住宅やアパートなどの敷地として利用されている住宅用地で、 住宅1戸あたりの面積200㎡までの部分が小規模住宅用地に該当し、この部分の土地に対する都市計画税の税額を2分の1に減額するというものです。
 二つ目は、小規模非住宅用地に対する固定資産税・都市計画税の減免措置です。 商業ビルや店舗の敷地、駐車場などの非住宅用地で、一画地における非住宅用地の面積が400㎡以下のものが小規模非住宅用地に該当し、 このうち200㎡までの部分に係る固定資産税及び都市計画税の税額を2割減免するというものです。
 三つ目は、商業地等に対する固定資産税・都市計画税の負担水準の上限引下げ措置です。店舗建物や駐車場の敷地などの商業地等について、 今年度の固定資産税評価額に対する前年度の課税標準額の割合(負担水準)が65%を超えるものについては、 固定資産税及び都市計画税を負担水準65%に相当する税額まで軽減するというものです。

東京都では、こうした軽減措置を平成27年度も継続することをこのほど決定。 「地価の高騰による過重な税負担等を緩和し、人口定住の確保や厳しい経済状況の変化に対応する」としています。

 



   相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例適用で注意。
              e-Taxで不具合発覚


                                 2015年01月13日
相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例を適用する人が譲渡所得税の申告をe-Tax(国税の電子申告システム)で行うとき、 申告書に添付しなければならない「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」が添付できない場合があることが判明しました。

国税庁によると「同計算明細書の平成26年1月1日以後相続開始用は添付できるが、平成25年12月31日以前相続開始用は添付できない」としています。 そのため「平成26年1月1日以後相続開始用を使っていただき、同計算明細書の『相続税の申告書第1表の「22」の金額』を 『相続税の申告書第1表の「21」の金額』に読み替えて提出してください」としています。

この相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例は、相続税を払うためにやむを得ず相続した土地を売却して換金するときに適用する制度で、 昨年までの相続分については、売却した土地に対応する相続税だけでなく、 他の売却しない土地にかかる相続税も売却した土地の取得費に加算できていました。 土地を多く相続した場合には、譲渡所得税がゼロになるケースもあったことから、節税目的で利用する人も少なくありませんでした。

しかし、平成26年度税制改正で「取得費に加算できるのは、売却した土地に対応する相続税だけ」と改正され、 平成27年1月1日以後相続により取得した土地などから適用されることになっています。

 



       ニセの「税務署からのお知らせ」メールに要注意

                                 2014年10月20日
 税務署をかたった詐欺まがいの電話やメールが届くという事件が発生していることから、国税庁が 「税務署からのお知らせ」メールが届いた人に対して注意を呼びかけています。

国税庁の電子申告システム(e-Tax)では、メールアドレスを登録した人に対して、メッセージボックスに情報が格納された場合や、 暗証番号の再設定のための秘密の質問と答えなどの登録を受け付けた段階で、 その登録しているメールアドレスあてに「税務署からのお知らせ」メールを送信しています。
 そのため、税務署をかたって還付金の受取りのためになどと言って預金口座番号を聞き出したり、 添付ファイルでウイルスを送り付けたりする不正メールを開封してしまう可能性があるわけです。

国税庁では、「メールに表示する宛名をe-Taxに登録することで、お知らせメールの件名や本文に登録した宛名が表示されます。 そして、e-Taxが送信するお知らせメールは、一定のパターンのみです」と説明しています。 したがって、「税務署からのお知らせ」メールに酷似していたり、「税務署からのお知らせ」メールに偽装したメールで特定のパターン (e-Taxホームページに掲載)に当てはまらない件名や本文で送信されたメールは、e-Taxから送信したものでないわけです。
 とくに、「税務署からのお知らせ」メールには、添付ファイルを添付することがないので、 添付ファイルが添付されている場合は絶対に開封してはいけません。

 



             日税連が全国15税理士会と
        共催で成年後見制度の無料相談会を開催

                                 2014年10月14日
 日本税理士会連合会(日税連=池田隼啓会長)が、11月1日(土)に15税理士会との共催で成年後見制度に関する全国一斉の無料相談会を開催すると発表しました。
 成年後見制度とは、心神喪失など判断能力が不十分な方々が不利益を被らないように支援・保護する制度で、2000年4月1日にスタートしたものです。

 本人の判断能力に応じて、家庭裁判所が選任した後見人等(支援者)が本人の援助を行う法定後見と、本人の判断能力が健常な段階で、 判断能力が低下した場合での後見の範囲や後見人等をあらかじめ公正証書の契約によって定めておく任意後見の2つの制度があります。
 税理士は、事業を営む人の税や経営に関することや個人の資産管理に関することに携わっていることから、その後見人としてふさわしいとされています。
 そこで、日税連も日税連成年後見支援センターを同連合会の特別委員会として、平成23年7月28日に設置。 地域の税理士会における指導者を養成するための研修を行っているところです。

 その日頃の研修の成果を発揮する意味も含めて、日税連では来る11月1日(土)、 15税理士会との共催で成年後見制度に関する全国一斉の無料相談会を開催すると発表。
 そして、当日は、相続税・贈与税に関する無料相談もあわせて実施することにしています。



       支払金額などが不確定な年金払い保険金の
         受給権の相続税評価を変更―国税庁

                                 2014年10月06日
 このほど、国税庁が年金払い保険金の受給権の相続税評価を変更しました。 相続時に相続人が受け取る年金(保険金)の種類や支払期間、支払総額、一年間の支払金額などが定まっていない年金払い保険についても 相続税法第24条を適用することになりました。
 一般的に年金払い保険金については、相続発生時に年金の種類や支払期間、支払総額、一年間の支払金額が決まっているものです。 そして、この一般的な年金払い保険金の受給権の相続税評価は、相続税法第24条を適用することになっています。

 今回、国税庁が取り扱いを変更したのは、年金払いの生命保険契約で、相続開始時において年金の種類や支払期間、支払総額、 一年間の支払金額等が定まっていない保険金の相続税評価です。 この支払金額等が定まっていない保険金について国税庁は、これまで一時金で評価していまいました。

 しかし、このほど国税庁は、この取り扱いについて「契約者が年金の方法により死亡保険金の支払を受ける契約を締結し、 かつ、死亡保険金の支払事由の発生後に死亡保険金の受取人が年金の種類、 年金の受給期間等を指定することが契約により予定されている生命保険契約に係る死亡保険金の受給権については、 受取人が相続開始後、受給開始前に指定を行ったことにより確定した年金の種類、 受給期間等を基礎として相続税法第24条『定期金の権利の評価』を適用する」としました。
 過去の申告についても遡及適用され、還付金を受けることができる場合があるともしています



  海外資産関連の相続税申告漏れが統計開始以来最多をマーク

                                 2014年11月25日
 全国の国税局・税務署が今年6月までの1年間に実施した相続税調査の状況を国税庁がまとめました。 それによると、海外にある相続財産の申告漏れ件数などが、統計開始以来最多をマークしています。

 国税庁のまとめによると、相続税の実地調査の総件数は1万1,909件(対前事務年度比97.5%)でした。 このうち申告漏れがあった件数は9,809件(同98.5%)で、申告漏れ課税価格は3,087億円(同92.2%)といずれも減少しています。 これは、昨年行われた国税通則法の改正で税務署サイドの事務作業が増え、1件当たりの調査期間が伸びたことなどが影響したものです。

 今回の特徴は、海外資産関連の調査事績にあります。実地調査件数が753件(同104.4%)と微増でしたが、 海外資産に係る申告漏れが把握された件数は124件(同109.7%)で、申告漏れ課税価格が163億円(同620.0%)と急増しました。 しかも、1件当たりの申告漏れ課税価格は1億3,146万円(同565.0%)と高額でした。 いずれも、国税庁が統計を取り始めて以来最多の数値となっています。
 国税庁では「経済のグローバル化に伴う企業や個人の海外取引や海外資産の保有・運用形態の複雑化・多様化に対応するため、 租税条約等に基づく情報交換制度の活用など、国際的な取り組みに努めています。
 また、昨年度からは、一定の条件を満たした国外財産について申告を義務づける国外財産調書制度も開始されており、 今後も海外資産については積極的な調査を実施していく」としています。



     国税庁が上場直前の株式の相続税評価方法を改正

                                 2014年06月23日
 金融検査当局の取り締まり強化でインサイダー取引が減少したことから、このほど、国税庁が「公開途上にある株式」の相続税評価方法を改正しました。
 これまで国税庁では「気配相場等のある株式」のうち、「公開途上にある株式」については、次のいずれかに該当する株式としていました。

 ①金融商品取引所が内閣総理大臣に対して株式の上場の届出を行うこと
   を明らかにした日から上場の日の前日までのその株式(登録銘柄を除く)
 ②日本証券業協会が株式を登録銘柄として登録することを明らかにした日か
   ら登録の日の前日までのその株式(店頭管理銘柄を除く)

 また、公開途上にある株式の公開価格については、 金融商品取引所又は日本証券業協会の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の価格としていました。
 この取り扱いについて国税庁では、公開途上にある株式に該当する期間の始期について 「金融商品取引所が内閣総理大臣に対して株式の上場の届出を行うことを明らかにした日」から 「金融商品取引所が株式の上場を承認したことを明らかにした日」に改正。
 そして、公開途上にある株式の公開価格については、 現在、入札方式とブックビルディング方式(機関投資家の意見を基に仮条件を決定し、この仮条件を基に投資家が提示した価格、 購入株式数により公開価格を決定する方式)の2つの方法により決定されていることから 「金融商品取引所又は日本証券業協会の内規によって行われるブックビルディング方式又は競争入札方式のいずれかの方式により決定される公募等の価格」 に改めています。



    納税者番号制度で法人の付番手順などを公開―国税庁

                                 2014年06月16日
 マイナンバー制度(納税者番号制度)は昨年5月に国会で成立していますが、このほど国税庁が法人向けの付番についてパブリックコメントの募集を開始しました。
 マイナンバー制度とは、納税者の管理制度の一つで、納税する年齢に達した国民に番号を割当てて、所得や資産、納税の状況を国が一元的に把握できるシステムです。 法人についても例外ではなく付番され、過去現在未来にわたり出納状況を国が保管して、脱税や社会保険料の未納について把握できるようになります。
 ただ、この番号制度は、個人情報保護法との関係で、過去の過ちが生涯つきまとうという人生のやり直しを妨げる可能性を秘めたものでもあります。

 6月7日に国税庁が公表した「法人番号の指定等に関する省令(案)」は、「番号を国税庁が付番するが、それに対して、何か不満はないですか」と、問いかけたものです。  具体的には「マイナンバー制度に基づいて、平成28年1月からの利用開始に先立ち、27年10月に個人番号と法人番号を、それぞれ個人、法人に通知するが、 このうち、法人番号については、法人番号の所管となる国税庁が13桁の番号を指定し法人に通知するとともに、法人等の基本3情報であるその法人の商号又は名称、 本店又は主たる事務所の所在地及び法人番号を広く一般に公開する」としています。

 そして、法人番号については「法人への通知後、速やかに、インターネットを利用して公衆の閲覧に供する方法により行われる(ただし、人格のない社団等の場合は、 あらかじめ同意を得てからの公表となる)。 公表後、その法人に、清算の結了その他の事由が生じたときは、その事由が生じた旨及びその年月日を公表する」とされています。
 なお、その他の事由については「清算の結了の他、合併による解散、 商業登記規則第81条第1項の規定により登記記録が閉鎖されたことその他これに準じる事由」としています。
 この省令案に対する意見募集は7月6日まで受け付けています。





          【平成26年度税制改正】

   -個人税制-
 ● 給与所得控除の縮小
 給与所得では所得税や住民税の基準となる課税所得金額を計算する際、給与収入から必要経費にあたる給与所得控除を差し引くことができます。
 給与所得控除は、給与収入に応じて65万円から245万円となっています。現行の給与所得控除の上限は245万円で、年収1,500万円超の人が対象です。
 これが平成28年には年収1,200万円超で230万円、平成29年には年収1,000万円超で220万円に引下げられます。
 給与所得控除額が縮小されると、その分課税所得金額が増えるため、所得税は同年分、住民税は翌年分から負担する税額が増えます。 課税の対象となる年収1,000万円超の給与所得者は172万人で、給与所得者全体の3.8%程度とされています。

                             
現   行 平成28年分(注1)平成29年分以後(注2)
上限額が適用される給与収入 1,500万円 1,200万円1,000万円
給与所得
控除の上限額
245万円 230万円220万円

(注1) 個人住民税については、平成29年度分について適用
(注2) 個人住民税については、平成30年度分から適用


● ゴルフ会員権の損益通算廃止
  生活に通常必要な資産の譲渡損失は、給与所得などその年の他の所得との損益通算をすることができます。 そのため、資産の売却損があるとその分だけ所得税を減らすことができます。
  一方で、別荘や貴金属などの生活に通常必要でない資産は、 趣味娯楽を目的として所有する場合が多いことから、損益通算はできないことになっています。
  今回の改正では、この生活に通常必要でない資産の範囲にゴルフ会員権やリゾート会員権が含まれることになりました。 したがって、今後はゴルフ会員権やリゾート会員権の譲渡損失については、給与所得などその年の他の所得との損益通算をすることができなくなりました。
  平成26年4月1日以後に行う譲渡について適用されます。


 ● NISAの利便性向上
  小額投資非課税制度(NISA)が平成26年1月1日から始まりましたが、 利用するには証券会社や銀行などの金融機関に口座を開設する必要があります。
  現在の制度では、4年間は金融機関を変更できず、 また1度口座を廃止すると4年間は再開設できないなどその利便性に問題があるとされてきました。
  このため改正では、1年単位で金融機関の変更ができるようになったほか、 いったん口座を廃止した場合でも翌年以降に口座の再開設ができるようになりました。
  この改正は、平成27年1月1日以後のNISA口座の変更または廃止について適用されます。

           
改 正 前 改 正 後
口座開設金融機関の変更 同一の勘定設定期間(最長4年間)内では、変更できない 勘定設定期間にかかわらず、1年単位で変更可能
口座廃止後の再開設 いったん開設したNISA口座を廃止した場合は、同一勘定設定期間中は再開設できない 一度開設したNISA口座を廃止した場合であっても、翌年以降に再開設可能



● 同族会社発行社債の特定公社債からの除外
  平成25年度の税制改正において、同族会社が発行した社債の利子で その同族会社の役員等が支払いを受けるものは20%源泉分離課税から総合課税に変更されました。
  これは、中小企業の役員等が会社に資金を貸し付ける際に、少人数私募債を発行し受取利息を20%源泉分離課税とする節税策に対する規制ですが、 現行では平成28年1月1日以後に発行する社債から適用することとされています。
  これが、平成28年1月1日以後に支払いを受けるべき利子から適用すると改正されました。 したがって、平成27年12月31日以前に発行された社債であっても平成28年1月1日以後に支払いを受けるものは、 利子所得の20%源泉分離課税の対象から除かれることになります。


 ● 事業再生税制の創設
  法人では、合理的な再建計画に基づき再生企業が金融機関から債権放棄を受ける場合、 債務免除益を評価損や期限切れ欠損金と相殺できる手当てがなされています。
  しかし、個人事業者についてはそのような制度がないため、 債務免除益に対する課税が事業再生の障害となったり、債権放棄が進まないといった問題が生じていました。
  そこで今回の改正では、個人事業者についても、合理的な再建計画により金融機関から債権放棄を受け、 一定の方法により減価償却資産及び繰延資産等の評定を行っている場合には、 評価損の損金算入を認め、債務免除益との相殺ができるようになりました。
  この改正は、平成26年4月1日以後に債務処理計画に基づき債務免除を受ける場合に適用されます。


 ● ストックオプション税制の明確化
  ストックオプションのうち「税制非適格」のものは、権利行使をしたときの株式の時価と権利行使価額の差額は給与所得等として課税されますが、 権利行使をしないまま新株予約権を発行法人に売却すると譲渡所得として20%申告分離課税が適用されます。
  今回の改正では、権利行使の有無による課税の差異を解消するため、 権利行使をせず発行法人に譲渡する場合の経済的利益は給与所得等として課税されることになりました。
  この改正は、平成26年4月1日以後に行う新株予約権の譲渡から適用されます。


   【平成25年度税制改正―相続税関係の改正】

 ● 相続税・贈与税の改正
相続税・贈与税については、平成27年1月1日以降の相続・贈与から次の改正が行われることになりました。
(1)  最高税率の引き上げ
相続税の最高税率が50%から55%に上がり、課税対象となる遺産額が6億円超の部分に適用されます。また、2億円超~3億円の部分に適用される税率も40%から45%に上がります。相続税の税率は10%から50%の6段階から、10%から55%の8段階に増えることになります。
(2)  基礎控除の引き下げ
相続税の基礎控除が、現行の「5000万円+1000万円×法定相続人」から「3000万円+600万円×法定相続人」に4割引き下げられます。
(3)  小規模宅地等特例の面積拡大
相続税評価額を80%減額できる居住用宅地に係る特例の適用対象面積が、現行の240㎡までの部分から330㎡までの部分に拡大されます。
(4)  未成年控除及び障害者控除の引き上げ

  ①未成年者控除
現行の20歳までの1年につき6万円から20歳までの1年につき10万円に引き上げられます。
  ②障害者控除
現行の85歳までの1年につき6万円(特別障害者12万円)から85歳までの1年につき10万円(特別障害者20万円)に引き上げられます。
(5)  贈与税の軽減
現行では誰に財産を譲り渡しても、課税対象となる財産の600万円超~1000万円の部分に40%、1000万円超の部分に50%の税率で贈与税がかかります。これが改正により子や孫に贈与する場合には600万円超~1000万円の部分に30%、1000万円超~1500万円の部分に40%の税率を適用するなど贈与税の税率が軽減されます。
(6)  相続時精算課税制度の適用要件の緩和
  ①受贈者の範囲は現行推定相続人のみですが、これに20歳以上である孫が追加されます。
  ②贈与者の年齢要件は現行65歳以上ですが、これを60歳以上に引き下げられます。


●教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
祖父母が孫などに将来の教育資金(授業料や入学金)をまとめて譲り渡した場合、1人当たり1500万円までなら贈与税がかからないという制度が創設されました。
 受贈者(30歳未満の者に限る)の教育資金に充てるためにその直系尊属が金銭などを拠出し、金融機関に信託などをした場合には信託受益権の価額又は拠出された金銭等の額のうち受贈者1人につき1500万円(学校以外に支払われる金銭は500万円を限度)までの金額に相当する部分の価額については平成25年4月1日から27年12月31日までに拠出されるものに限り贈与税を課さないものとされます。


● 事業承継税制
 事業承継税制(非上場株式などに係る相続税・贈与税の納税猶予制度)は、後継者の相続税・贈与税額のうち、議決権株式などの80%にあたる相続税・贈与税の納税が猶予される制度です。
 中小企業の相続を円滑にするための制度ですが、その適用要件が厳しく、うまく機能していないのが現状で、平成20年10月から24年9月までの認定件数は相続381件、贈与168件にとどまっています。そこで、平成27年1月1日以後に相続又は贈与により取得する非上場株式等について、次の改正が行われることになりました。
  ① 経営承継相続人等の要件のうち、非上場企業を経営していた被相続人の親族であることとする要件が撤廃されます。現行では先代経営者の親族が代表者を継続しなければ事業承継税制を利用することができませんが、この改正により、だれが代表者となっても利用できるようになります。
  ② 贈与税の納税猶予における贈与者の要件のうち、贈与時に認定企業の役員でないこととする要件について、贈与時に代表権を有していないことに改められました。これにより先代経営者が役員に留まっていても、贈与認定を受けることができるようになります。
  ③ 役員である贈与者が認定企業からの給与の支給などを受けた場合であっても、贈与税の納税猶予の取消事由に該当しないこととなりました。
  ④ 納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件について、経済産業相の認定の有効期間(5年間)における常時使用従業員数の平均が、相続開始時または贈与時における常時使用従業員数の80%を下回ることとなった場合に緩和することになりました。
  ⑤ 民事再生計画の認可決定などがあった場合には、その時点の株式の価額に基づき納税猶予税額を再計算し、納税猶予を継続する特例が創設されます。
  ⑥ 納税猶予税額の計算において、被相続人の債務及び葬式費用を相続税の課税価格から控除する場合には、非上場株式等以外の財産の価額から控除することになりました。
  ⑦ 経済相の認定の有効期間(5年間)の経過後に納税猶予税額の全部又は一部を納税する場合については利子税を免除することとされました。




    【平成23年度税制改正―相続税関係の改正】 

-相続・贈与税の主な改正-
  ※以下の相続税関係の改正は平成23年4月1日以後の相続から、贈与税関係の改正は平成23年1月1日以後の贈与から適用されます。

<相続税関係>

●相続税の基礎控除の引下げ
 相続税の基礎控除が次のように引き下げられます。(この基礎控除の引下げにより平成21年分で4.1%であった相続税の課税割合が6%台程度になる見込みです。)
 (改正前) 5000万円+法定相続人数×1000万円
 (改正後) 3000万円+法定相続人数×600万円


●相続税率の引下げ
 相続税の税率について、最高税率を50%から55%に引き上げ、税率構造は6段階から8段階になります。5000万円超1億円以下(30%)までの税率は変わりませんが、2億円以下の金額は40%、3億円以下は45%、6億円以下は50%、6億円超は55%になります。

           
  ◇改正後の相続税の税率表
法定相続人の取得金額 税 率 控除額
 1000万円以下 10%  -
 1000万円超3000万円以下 15% 50万円
 3000万円超5000万円以下 20% 200万円
 5000万円超1億円以下 30% 700万円
 1億円超2億円以下 40% 1700万円
 2億円超3億円以下 45% 2700万円
 3億円超6億円以下 50% 4200万円
 6億円超 55% 7200万円



●死亡保険金の非課税限度額の見直し
  死亡保険金の非課税限度額が次のように見直されました。
  (改正前) 500万円×法定相続人数
  (改正後) 500万円×「未成年者、障害者又は相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた相続人の数」


●未成年者控除と障害者控除の引き上げ
  未成年者控除と障害者控除はそれぞれ1人あたり6万円でしたが、これが1人あたり10万円に引き上げられました。


<贈与税関係>

●贈与税税率の見直し
  贈与税の最高税率が50%から55%に引き上げられます。
  また、生前贈与による子や孫への財産移転を促進するために、20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税率は、一般の贈与税率と区別され、税率が緩和されます。
 改正後の贈与税率は、次のように「直系尊属からの贈与」と「一般の贈与」の2本立てになります。

           
  ◇直系尊属からの贈与の税率表
基礎控除後の課税価格 税 率 控除額
 200万円以下 10%  -
 200万円超400万円以下 15% 10万円
 400万円超600万円以下 20% 30万円
 600万円超1000万円以下 30% 90万円
 1000万円超1500万円以下 40% 190万円
 1500万円超3000万円以下 45% 265万円
 3000万円超4500万円以下 50% 415万円
 4500万円超 55% 640万円

           
  ◇一般の贈与の税率表
基礎控除後の課税価格 税 率 控除額
 200万円以下 10%  -
 200万円超400万円以下 15% 10万円
 400万円超600万円以下 20% 25万円
 600万円超1000万円以下 30% 65万円
 1000万円超1500万円以下 40% 125万円
 1500万円超3000万円以下 45% 175万円
 3000万円超4500万円以下 50% 250万円
 4500万円超 55% 400万円


●相続時精算課税制度の見直し
  相続時精算課税制度の適用対象となる受贈者は、推定相続人のみですが、 この受贈者の範囲が拡大され、20歳以上の孫も加えられます。また、贈与者の年齢要件も65歳以上から60歳以上に拡大されます。
  孫が20歳以上になれば相続時精算課税制度を適用して贈与することも可能になりますが、相続時に2割加算の対象になることに変わりありません。一方、改正後の直系尊属からの贈与についても孫も対象になるので、 どちらが有利かを検討することも必要になってきます。




-贈与税の非課税枠拡大-

  政府は12月7日、平成22年度税制改正で、こどもの住宅取得を親が支援する際の贈与税の非課税枠を拡大する方針を固めました。住宅投資の促進のため必要と判断し、新たな経済対策に盛り込む予定です。国土交通省は現行の500万円を2000万円に拡大するよう求めていますが、拡大の額をめぐっては調整が続いています。
 贈与税の非課税枠拡大は、高齢者の資産を子や孫の世代に移転しやすくして住宅投資を促進させるのが狙いで、今春の経済対策で22万末までの措置として500万円の特例枠が設けられました。
 政府は、今回の経済対策でも、住宅投資を促して景気回復を目指すことが重要と考え、住宅の建設や改修などを後押しする「住宅版エコポイント制度」の創設を打ち出すことにしており、税制面でも住宅投資を支援することになりました。親などから20~30歳代への資産贈与を促したい考えです。
 国土交通省の試算によると、非課税枠を2000万円まで拡大した場合の経済波及効果は、6000億円に上がるということです。政府税制調査会では、これまで国土交通省が非課税枠の拡大を強く求めてきたところです。