相続時精算課税制度の利用

*相続時精算課税制度のあらまし

平成15年の税制改正で贈与税が大きく変わりました。この贈与税の改正では、これまでに説明した贈与税のしくみ(従来からの課税方式)自体はかわりません。これとは別に新しい制度である相続・贈与税の一体化課税方式(相続時精算課税制度)が設けられました。

贈与税は、生前贈与による節税を防ぐために、相続税よりもずっと負担が重くなるしくみになっています。そのため、親から子への財産の移転は、ほとんどの場合に相続を通じて行われてきました。その結果、財産の移転がなかなか進むことがなく、この贈与税のしくみに問題が生じるようになってきました。

例えば、子供が住宅を必要とする年令になっても、すぐには親の資金を利用して住宅を購入することができません。

また、日本人の平均寿命が延びているため、相続の時期がどんどん遅くなっています。以前であれば、子供が40代後半ぐらいのときに遺産相続が行われるのが一般的でしたが、現在では平均寿命の延びに伴って、60代で相続があるのが普通となってしまいました。これでは親譲りの事業を拡大したり、資産を運用することが難しくなってしまいます。

そのため、早めに若い世代に財産を移す必要性生じてきたのです。そこで相続税と贈与税を一体化した新しい課税制度が導入されました。そのしくみは、相続のときに相続財産と生前に贈与された財産とを合計して相続税額を計算し、すでに支払った贈与税分を差し引いて納付するというものです。ここでいう贈与税は、贈与財産が2500万円までなら非課税、それを超える部分については20%納税となっています。

そのため、この新しい課税制度である相続時精算課税制度を利用すれば、生前贈与により財産を取得しても相続した場合と同じ負担水準になるわけです。

この制度は、必ず使わなければならないというものではなく、選択により利用できるという制度です。したがって従来通りの方式で納税してもかまいません。

相続・贈与税の一体化課税の適用を受けるため条件や手続きなどは次の通りです。

*適用を受けられる人の条件

贈与する人は、満65歳以上の親であること。

*適用を受けるための手続き

相続・贈与税の一体化税制度の適用をうけるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、税務署にこの制度を選択する旨の届け出が必要になります。最初の贈与のときに届け出すれば、相続のときまでこの制度の適用が継続されます。

財産の贈与を受ける、子である推定相続人が複数いる場合には、その兄弟姉妹がそれぞれ別々にこの制度を選択することができます。また、財産を贈与する方の父、母ごとにこの制度を選択することができます。

贈与財産の種類、金額、贈与回数には制限がありません。

なお、相続・贈与税の一体化制度を選択して贈与したときの、贈与財産の価額は相続税評価額によることになります。