公的融資の活用

◎ 公的融資は独立開業者、中小企業の強い味方

独立開業者、中小企業が資金調達をしようとする場合に、まず検討すべものが公的融資です。公的融資とは、国や地方自治体による融資活動をいいます。 国による融資は、政府系金融機関などによって行われます。具体的には、日本政策金融公庫、中小企業基盤整備機構などによる融資です。地方自治体では、都道府県と市区町村にそれぞれ融資制度があります。

公的融資の目的は、独立開業者、中小企業が民間の金融機関では融資を受けることを困難とするような資金の供給をして、独立開業者、中小企業の支援をすることにあります。つまり、民間の金融機関では融資できないようなところを、国や地方自治体がフォローして融資しようというのが公的融資の制度です。 この公的融資の資金は、私たちが支払った税金とか、積み立てている年金、郵便局で扱っている貯金や簡易保険などを財源としています。そして、その運用が赤字になると税金で補填されます。そのため民間の金融機関で融資を受けるよりも、ずっと有利な条件でお金を借りることができます。

したがって、公的融資を利用したほうが絶対にトクです。しかし、これは国や地方自治体による事業であるため、宣伝活動や営業活動は積極的に行われておらず、その存在や利用の仕方を知らない人も少なくないようです。また、お役所仕事であるため、手続きが面倒だから利用しないという人もいるようです。

◎ 公的融資のメリット

公的融資を利用するには手続きが面倒ところがありますが、次のように多くのメリットがありますので、その内容と利用のしかたをよく研究して、大いに活用するようにしてください。

? 貸し渋りがない

・・・銀行は大企業や収益性が高く担保のある企業にお金を貸したがります。それが安全確実で、利益につながるからです。また、BIS規制と早期是正措置という足枷があるため、貸し出しを抑制する傾向にあります。これが中小企業に対する貸し渋りです。

これに対し、公的融資は民間金融機関が貸し渋りの状況にあるときに、国の経済対策として新たに融資枠を設けたり、融資限度額を引き上げたりする側面があります。したがって、公的融資には貸し渋りがありません。それどころか、銀行が貸し渋りをすればするほど、借りやすくなります。

? 金利が低く無利子のものもある

・・・公的融資は、国や地方自治体が儲けるための制度ではなく、損をしても中小企業の経営の安定を支援していこうという制度です。したがって、金利は民間の金融機関よりも安くなっているが一般的です。なかには民間の金融機関よりも特別に安い金利で借りられるものもありますし、無利子で借りられるという制度もあります。

? 固定金利である

・・・銀行の融資と公的融資の大きな違いは、銀行の融資が変動金利であるのに対し、公的融資は固定金利であるということです。 現在のような金利が低いときに、固定金利で借りておけば、市中金利が上がっても利子負担は変わらず、資金計画も立てやすくなります。

? 無担保・無保証で借りられる資金もある

・・・民間の金融機関でお金を借りると、担保の提供を求められたり、保証人を要求されたりするのが常識です。これに対し、公的融資には無担保・無保証で、しかも低利で借りられる資金が用意されています。たとえば、日本政策金融公庫のマル経融資(経営改善貸付)や第三者保証人等を不要とする融資などがそれで、そのほかに都道府県や市町村にも無担保・無保証の融資制度があります。

◎ 信用保証制度もフル活用

たいていの中小企業、特に独立開業者は、担保力や信用力が不足しているため、金融機関から事業資金を調達しようとしても、必要な資金の借入れができないことも少なくありません。そこで独立開業者、中小企業の信用力を補完し、資金調達の円滑化を図るために設けられたのが信用保証制度です。

この制度は、独立開業者、中小企業が金融機関から事業資金を借入れる際に、信用保証協会がその借入金の保証を行ないます。万が一、独立開業者、中小企業が借入金の返済をすることができなくなった場合には、信用保証協会が代って債務の履行をします。このことによって金融機関のリスクがなくなり、独立開業者、中小企業は円滑な資金の調達が可能になるというわけです。

信用保証協会は、各都道府県ごとにそれぞれ一つの協会が設けられており、そのほか川崎市、横浜市、名古屋市、岐阜市、大阪市の5つの市にもそれぞれ設けられて、全国に52協会あります。信用保証協会の運営は、信用保証料によって賄われていますが、国や地方自治体も財政援助を行なってその目的の達成に協力しています。

信用保証の申込みは、通常、取引先金融機関を通して行ないますが、企業が直接協会の窓口で申し込むこともできます。信用保証協会の保証を受けるには連帯保証人が必要で、会社の場合は代表者がなれば足りますが、第三者の連帯保証人を求められることもあります。

保証額が8000万円までは、無担保で保証が受けられる可能性があります。その額を超えると担保の提供が必要になりますが、信用保証協会での担保評価は、民間金融機関の評価と比べると若干有利な基準で行なわれることが多いため、与信枠が拡大する可能性があります。また、信用保証協会に担保を差し入れておくと、どの金融機関からの借入れにも利用できるというメリットがあります。