高橋会計事務所では土地有効活用のお手伝いをしています。アパート・マンションの建設のほか、事業会社への土地の貸付けや事業会社との共同事業などのご紹介も可能です。
土地の有効活用を目的として事業を行う場合、その投資額は、数千万あるいは億単位になるのが普通です。投資額が大きいので、失敗することは許されません。
また、土地活用の事業にあたっては、その土地に最も適した建物を選び、テナントを募集し、建物を運用管理しなければなりませんが、
このためには高度のノウハウを必要とし、また多くの手間がかかります。しかし、一般の土地所有者にはこのようなノウハウはないし、
それほどの手間もかけられないのが普通です。
そこで、土地活用を専門に行っている会社と共同事業することにより、リスクを減らし、そのノウハウを利用する方法もあります。
共同事業による土地活用の手法としては、主に次の5つがあります。
1.等価交換方式
2.土地信託方式
3.事業受託方式
4.建設協力金方式
5.新借地方式
これらの土地活用により、収益を産まない土地を収益物件に変え、納税資金の準備をすることができます。収益物件があれば、納税方式として延納を選択し、相続税を分割払いすることもできます。
また、土地の有効活用をすること自体、相続税の節税につながります。
5つの土地有効活用手法のうちいずれかを選ぶかは、それぞれの特徴をよく理解したうえで、土地活用の第一の目的や自分と土地の条件に合わせて判断する必要があります。
相続税の節税を中心に考えるなら、土地信託方式、事業受託方式、建設協力金方式の中から選びます。借金をしたくない場合には、等価交換方式、建設協力金方式、新借地方式の中から選ぶことになるでしょう。土地を手放したくない人には等価交換方式は適しません。
ところで、共同事業で土地活用を行う場合には、高い収益の見込まれる土地でなければ事業パートナーにとってメリットがありません。
したがって、土地は、駅から近いところ、幹線道路沿いなど立地条件のよいところに限られてきます。また面積も最低でも300坪以上は必要です。
1.等価交換方式
(1) 等価交換のしくみ
等価交換方式は土地所有者とディベロッパーとの土地活用共同事業システムです。
土地所有者は土地を提供し、ディベロッパーは建設費の全部を負担してその土地にマンションや賃貸ビルを建設します。そして、土地の所有権と建物の所有権を交換して事業を開始します。
交換によって、土地については共有持分、建物については区分所有権を、土地所有者とディベロッパーがそれぞれ持つのが普通です。
たとえば、土地の価額が6億円と評価され、ディベロッパーの負担する建設費が4億円であるとします。事業費用の合計は10億円で、負担割合は6対4です。
等価交換により、土地所有者は土地と建物の60%分の所有権を有し、ディベロッパーは土地と建物の40%分の所有権を有することになります。すなわち土地の40%分(60,000万円×40%=24,000万円)と建物の60%分(40,000万円×60%=24,000万円)の価値が等しいものとして交換されるわけです。
(2) 等価交換のメリットとデメリット
等価交換には次のような
<メリット>があり、土地の有効活用の手法としてよく利用されています。
■ 土地の一部を譲渡したことによる譲渡益に対する課税が繰り延べられます。土地と建物の交換とはいえ、土地の譲渡ですから譲渡益に対して税金がかかるのが原則です。しかし、一定の条件を満たす等価交換では課税が繰り延べられます。
■ 建物の建設は、専門のディベロッパーが行うのでノウハウの必要がありません。手間もかかりません。
■ 資金負担がありません。建物の建設資金は、ディベロッパーが全額負担するので、土地所有者の資金負担は全くありません。
他方、等価交換には、次のような
<デメリット>があることも考慮する必要があります。
■ 値上がりの可能性のある土地を手離すことになります。
■ 等価交換方式はディベロッパー主導で行われます。したがって、等価交換の際の交換比率はディベロッパー側に有利に決定される傾向にあります。
■ 等価交換によって取得した建物の取得価額は、譲渡した土地の取得価額を引き継ぎます。
かなり以前から所有している土地であれば、取得価額はわずかです。したがって、建物の取得価額もわずかとなって、減価償却費は、ほとんど計上できないことになります。
また、借入金もないため支払利息を経費にすることもできません。したがって、不動産所得の金額が大きくなり、所得税の負担が大変になります。
(3) 所有権の移転方式
等価交換をする場合の所有権の移転方式には、部分譲渡方式と全部譲渡方式があります。
部分譲渡方式は、土地所有者が土地の所有権の一部を譲渡して、その譲渡収入で建物の一部を取得する方式です。全部譲渡方式は、土地の所有権の全部を譲渡しその譲渡収入で建物の一部と譲渡した土地の一部を買い戻す方式です。
どちらの方式でも等価交換した時点では、同じ効果が得られますが、次の理由から部分譲渡方式が有利であるといえます。
● 等価交換をした場合には、取得日を引き継ぎませんので、全部譲渡方式により買い戻した土地も、新規取得になります。売却する場合には、短期保有になることもあります。
● 等価交換後、間もなく相続があると、全部譲渡方式により買い戻した土地について、相続開始前三年以内に取得した不動産となっています。
● 買い戻した土地には、登録免許税や不動産取得税がかかります。
土地所有者が一人の場合には、部分譲渡方式が用いられるのが普通です。
しかし、土地所有者が多数の場合には、土地をいったん譲渡して合筆してから、各所有者が土地の共有部分を取得した方が事務処理上の都合が良いため、全部譲渡方式が用いられることもあります。
(4) 等価交換の種類
税法上は、等価交換が行われるケースとして、次の三つが定められています。
▼ 等価交換(タイプ1)
・・・・・・中高層耐火共同住宅の建設のための買換えの特例によるもの。立体買換えの特例とも言われます。
この特例は、既成市街地等内にある土地建物を譲渡し、その土地の上に建てられた地上階三以上の中高層の耐火共同住宅を取得した場合に適用されます。
したがって、この等価交換が適用されるのは、既成市街地等内にある土地に限られます。
この等価交換では、譲渡金額以上の買換資産を取得すれば、その譲渡はなかったものとして課税されません。
▼ 等価交換(タイプ2)
・・・・・・特定民間再開発事業のための買換えによるもの
この特例は、既成市街地等内やこれに類する一定の地区内において、地上階数四以上の中高層の耐火建築物を建築する特定民間再開発事業のために、土地建物等を譲渡した場合に適用されるものです。
この等価交換でも、譲渡金額以上の買換資産を取得すれば、その譲渡はなかったものとして課税されません。
▼ 等価交換(タイプ3)
・・・・・・特定事業用資産の買換えによるもの
この特例は、市街化区域又は既成市街地等内において、五年を超えて所有した事業用の土地建物を譲渡し、その区域内にある地上階数四(共同住宅は三)以上の建物及び土地を取得した場合に適用されるものです。
この等価交換は、市街化区域内であればよいため、かなり多くの土地について適用が可能です。
しかし、譲渡益の20%部分については課税されることになります。
(5) 相続対策としての効果
等価交換が行われると、土地の一部が建物に変わることになります。その建物を賃貸すれば、相続税評価額は次のように引き下げられます。
ア.建物は貸家となって、「家屋の評価額」から「借地権の評価額」30%を差し引くことができます。
貸家の評価額=家屋の評価額−借地権の評価額
イ.土地は貸家建付地となって、「宅地の価額」から「宅地の価額に借地権割合と借地権割合を乗じた額」を差し引くことができます。
貸家建付地の評価額=宅地の価額−宅地の価額×借地権割合×借地権割合
ウ.さらに、土地については、小規模宅地の評価減として、200平方メートルまでについて50%の評価減をすることができます。
このように等価交換は、相続税の節税につながりますが、等価交換3年以内に相続がある場合には、相続税評価額がかえって高くなることもあります。等価交換といえども、新たな建物の取得であることには変わりません。相続開始前3年以内に等価交換によって建物を取得している場合には、取得価額で評価されます。したがって、等価交換による節税効果は減少し、場合によっては等価交換によって相続税評価額が高くなることもありますので注意してください。
また、借入金がないので債務控除ができないため、土地信託等と比べると相続税対策の効果が小さいといえます。
1
2
3
次ページへ